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2026/06/18
コーポレートブランディングとは?目的や進め方、企業事例を解説
コラム
「自社のブランド価値をどう高めればよいかわからない」「コーポレートブランディングという言葉は聞くものの、何から始めればよいのか」とお悩みではありませんか?
本記事では、コーポレートブランディングの定義や目的、進め方、そして実際の支援現場で得られた知見までを体系的に解説します。
この記事でわかること
- コーポレートブランディングの定義と、私たちが考えるその本質
- コーポレートブランディングがいま注目される背景
- プロダクトブランディングとの違い
- コーポレートブランディングはどんな企業に向いているのか
- 取り組むことで得られる効果やメリット
- 実施手順と、エンビジョンの支援現場・実績にもとづく事例
Contents
コーポレートブランディングとは?
コーポレートブランディングとは、企業全体のブランド価値を高めるための一連の活動のことです。商品やサービス単位ではなく、企業そのものを一つのブランドとして捉え、社会やステークホルダーから選ばれる存在へと育てていく取り組みを指します。
ブランディングは広義には、企業や商品の独自の価値を定義し、それを社内外に一貫して伝えることで、共通したイメージを形成する活動と言えます。この考え方を企業全体に適用したものが、コーポレートブランディングです。
つまり、コーポレートブランディングは、企業の存在意義や提供価値を社内外に一貫して伝え、独自のイメージを定着させていく営みであると考えられています。
なお、ブランディングの基本的な考え方については、「ブランディングの意味とは?企業が行う目的や効果、手順を解説」もあわせてご覧ください。
コーポレートブランディングは「見た目の統一」ではない
コーポレートブランディングは、ロゴやメッセージのトーンを社内で揃える「見た目の整理」だと捉えられることがあります。
しかし私たちは、その理解では射程が狭すぎると考えています。
私たちが考えるコーポレートブランディングは、自社の存在意義を起点に、どの事業に注力しどの領域から撤退するのかという事業ポートフォリオの選択と集中、さらには自社の活動が業界や産業全体にどう波及するのかまでを含んだ、経営戦略そのものです。デザインの統一はその結果として現れるアウトプットの一部にすぎません。経営の意思とブランドが切り離されたまま見た目だけを整えても、企業の競争力にはつながりにくいと私たちは考えています。
コーポレートブランディングがいま注目される背景
コーポレートブランディングが注目を集める背景には、現代特有の社会変化があります。
代表的な要因として、次の5つが挙げられます。
1. 将来の予測が見通せない時代に突入
将来の予測が困難な時代だからこそ、「自社が社会に提供できる価値(存在意義)」を再定義することが求められます。その理念を起点として事業ポートフォリオを常に見直し、競争優位性のない領域から撤退・再配分を行うことが、企業の持続的な成長には不可欠です。
2. 製品・サービスの差別化が難しくなった
技術の成熟により、機能や品質だけで差別化を図ることが難しくなりました。
そのため、企業そのものへの共感や信頼が、顧客の選択基準として重要性を増しています。
3. ステークホルダーの多様化が進んだ
企業を取り巻く関係者は、顧客だけでなく、従業員、求職者、投資家、地域社会、取引先など多岐にわたります。
それぞれに対して一貫したメッセージを発信する必要性が高まっています。
4. 人材獲得競争が激化している
採用市場では、企業の理念や文化に共感する人材を獲得することが重要になっています。コーポレートブランディングは、採用力の向上にも直結する経営課題となっています。
採用面での活用については、「採用ブランディングで人材難を解決!メリットや目的、実施手順を解説」で詳しく解説しています。
5. テクノロジーの進化による社会変革の加速
テクノロジーの急速な進化は、従来の市場構造やビジネスモデルを根底から覆します。企業が生き残り成長するためには、最先端技術を原動力として自らの市場での立ち位置を柔軟に変革し続ける必要があります。AIをはじめ、ロボティクス、量子コンピューティングなど、社会を変革する可能性を持つテクノロジーの実装が今後ますます進んでいくと考えられます。
コーポレートブランディングとプロダクトブランディングの違い
ブランディングには大きく分けて、コーポレートブランディングとプロダクトブランディングの2種類があります。
両者の違いを整理すると、次のようになります。
| コーポレートブランディング | プロダクトブランディング | |
|---|---|---|
| 対象 | 企業全体 | 個別の商品やサービス |
| 目的 | 企業価値の向上、信頼の獲得 | 商品の認知拡大、購買促進 |
| ターゲット | 顧客、従業員、求職者、投資家、社会全般 | 商品の購買者・利用者 |
| 期間 | 中長期的に積み上げる | 商品ライフサイクルに応じて短中期的 |
両者は対立するものではなく、相互に補完し合う関係にあります。たとえば、企業ブランドへの信頼が高まれば、その企業が提供する個別商品も選ばれやすくなります。一方で、信頼される商品の存在が企業ブランドの評価を引き上げることもあります。
つまり、コーポレートブランディングとプロダクトブランディングは、両輪で進めることが望ましいと考えられています。実際の現場でも、企業ブランドの再定義から始めて、その価値を個別の製品・サービスへと落とし込んでいく流れは少なくありません。また、B2Bにおける製品・サービスの顧客の購入理由として、コーポレートブランドの役割は重要となります。
B2Bこそ、コーポレートブランディングが重要
コーポレートブランディングは、知名度のある大企業が取り組むもの、というイメージを持たれることがあります。
しかし私たちは、むしろ中堅・中小企業やBtoB企業ほど、その効果が大きいと考えています。
理由は3つあります。
1つ目は、中堅・中小企業ほど「自社の価値が正しく伝わっていない」状態に陥りやすいためです。優れた技術や独自の強みを持ちながら、それが言語化・可視化されておらず、採用や取引の場面で十分に評価されていないケースが多く見られます。
2つ目は、意思決定が速く、経営とブランドを一体で動かしやすいためです。大企業に比べて部門間の調整が少なく、経営者の意思がそのままブランドに反映されやすいことは、中堅・中小企業ならではの強みです。
3つ目は、差別化の余地が大きいためです。同業他社が「機能や価格」の競争にとどまっている領域ほど、企業そのものへの共感で選ばれる状態をつくれれば、価格競争から抜け出す足がかりになります。
私たちエンビジョンも、地域の士業事務所や工務店、精密部品メーカーといった中堅・中小企業のコーポレートブランディングを数多く支援してきました。
規模の大小ではなく、「自社のありたい姿を社内外に一貫して伝えたい」という意思を持つ企業にこそ、コーポレートブランディングは有効だと考えています。
コーポレートブランディングの効果
コーポレートブランディングに取り組むことで、企業は次のような効果を得られるとされています。
- 企業価値の向上:ブランドが社会から評価されることで、企業の無形資産であるブランドエクイティが高まります。これは、株価や企業価値の評価にも影響を及ぼす要素です。ブランドエクイティについては、「ブランドエクイティとは?4つの構成要素と高め方を解説」で詳しく取り上げています。
- 顧客ロイヤルティの強化:企業ブランドへの共感や信頼は、価格競争に巻き込まれにくい強固な顧客基盤を生み出します。リピート購入や推奨行動につながり、長期的な売上の安定に寄与します。
- 採用力の向上:理念や文化が明確な企業には、価値観に共感する人材が集まりやすくなります。結果として採用コストの削減や、定着率の向上が期待できると言われています。
- 従業員エンゲージメントの向上:社内に対しても一貫したブランドメッセージを浸透させることで、従業員のエンゲージメントが高まります。社内浸透の手法については、「インナーブランディングとは?目的や企業の成功事例を紹介」をご参照ください。
- 取引・提携の優位性:ブランド力のある企業は、取引先や提携先からも選ばれやすくなります。新規事業の立ち上げや、アライアンスの形成においても有利に働きます。
- 危機耐性の向上:ブランドへの信頼が蓄積されている企業は、不測の事態が起きた際にも、ステークホルダーからの支持を得やすい傾向があります。
コーポレートブランディングの進め方
コーポレートブランディングは、一般的に次のステップで進められます。
STEP 1:現状分析 自社・顧客/市場・競合の3つの視点(3C)などで自社の現在地を把握し、立つべきブランドポジションの仮説を立てます。
STEP 2:ブランドアイデンティティの策定 パーパス(存在意義)、ミッション、ビジョン、バリューといった「ありたい姿」を言語化します。
パーパスの策定方法については、「企業におけるパーパスとは?重要性や効果をわかりやすく解説」をご覧ください。
STEP 3:ブランドストーリーの構築 創業の背景、企業の歩み、未来への展望をつなぎ、共感を呼ぶ物語へと編み直します。
詳しくは「共感を呼ぶブランドストーリー戦略!重要性や作り方を解説」が参考になります。
STEP 4:ビジュアル・アイデンティティ(VI)の設計 ロゴ、カラー、タイポグラフィなどを設計し、一貫したブランド体験を生み出します。
「ビジュアルアイデンティティ(VI)とは?意味や作り方、事例を解説」もあわせてご覧ください。
STEP 5:社内浸透(インナーブランディング) 社外に発信する前に、まず従業員がブランドの体現者となることが重要です。
STEP 6:社外への発信 Webサイト、広告、PR、SNSなど、あらゆるタッチポイントでブランドメッセージを発信します。
STEP 7:効果測定と継続的な改善 ブランド認知度、好意度、推奨意向などの指標を定期的に測定し、PDCAを回します。コーポレートブランディングは一度策定して終わりではなく、継続的に育てていく営みです。
ブランドそのものを再構築する場合については「リブランディングとは?実施するタイミングやメリット、成功事例」をご覧ください。
エンビジョンが実際の支援現場で踏むプロセス
上記は一般的な流れですが、私たちエンビジョンが実際のプロジェクトで踏んでいるのは、「らしさ」を軸にした次の4つのステップです。
これは多数の支援を通じて磨き上げてきた、私たち自身の現場知見です。
- 「らしさ」を見つける:デスクトップ調査、経営層・部門責任者へのキーパーソンヒアリング、競合調査を通じて、その企業に眠る「らしさ」を棚卸しします。
- 「らしさ」を形にする:キーパーソン参加型のワークセッションで、ペルソナや「ありたい姿」(パーパス/ビジョン/バリュー)を定義し、カラーや形状、写真のトーンといった視覚要素にまで落とし込みます。
- 「らしさ」を軸にクリエイティブを展開する:ブランド定義をコーポレートサイトやポスター、社内説明資料といった具体的なアウトプットへ展開します。
- 「らしさ」を浸透させる:従業員向けの浸透プログラムやブランドブック、浸透度を測る調査を通じて、ブランドを組織に定着させます。
また、どこから着手すべきか定まらない企業に対しては、経営とブランドの観点から現状を可視化するブランディング診断(全25項目・5領域)を入口として活用しています。「経営とブランディングは両輪で推進できているか」「成長に向けた経営ができているか」といった観点で現状を5段階で評価し、ありたい姿とのGAPが大きい項目を特定したうえで、中長期のロードマップを描いていきます。
コーポレートブランディングの事例
ここでは、私たちエンビジョンが実際に支援した事例を中心に、コーポレートブランディングの実践をご紹介します。
事例1:辰巳公認会計士・税理士事務所(士業におけるコーポレートブランディング支援)
課題:税務・会計の堅実さを強みとする一方で、その魅力が採用市場で十分に伝わっておらず、人材獲得に課題を抱えていました。
施策:キーパーソンへのインタビューとワークショップを通じて事務所の「らしさ」を言語化し、税務・会計の堅実さと親しみやすさを両立する「かしこかわいい」というコンセプトを策定。ミッション・バリューの規定から事業ポートフォリオの再編資料、トーン&マナーガイドライン、コーポレートサイトまでを一貫して構築しました。
成果:採用課題に沿った形でブランドとクリエイティブガイドラインが整い、社外に対して事務所の人柄と専門性を一貫して伝えられる状態をつくることができました。規模の大きくない士業事務所でも、コーポレートブランディングが採用という経営課題に直結することを示す事例です。
顧問先からも、求職者からも「選ばれる事務所」になるために。
代表者の内なる「志」を丁寧に紐解くことで生まれた
ミッション・バリューを起点にクリエイティブへと昇華。
当社実績ページにて、詳細をご紹介していますのでぜひご覧ください。
事例2:パナソニック サイクルテック株式会社(製造業における「モノ売りからコト売り」への価値転換支援)
課題:法改正による原付(50cc)の生産終了や、電動モビリティに対する生活者の不安を背景に、製品の機能訴求(モノ売り)だけでは選ばれにくくなっていました。
施策:特定小型原動機付自転車「MU」のブランディングにおいて、調査・分析をもとに「暮らしに、ココロとカラダの余白を」というブランド構想を策定。製品の価値構造やペルソナを整理し、ロゴ・VI、コピー、Webコンテンツまでを設計しました。
成果:約3年にわたる伴走を通じて、製品の機能を売る発想から、生活者の暮らしに提供する価値を語る「コト売り」へと訴求の軸を転換しました。企業が持つ価値を個別の製品ブランドへと接続していく、コーポレートとプロダクトの両輪を体現した取り組みです。
「暮らしに、ココロとカラダの余白を」
日常の移動に寄り添う、新しいモビリティの選択肢
新たな市場を切り拓くブランディングプロジェクト。
当社実績ページにて、詳細をご紹介していますのでぜひご覧ください。
事例3:ダイハツ工業株式会社(コーポレートブランド価値向上に寄与する新規事業リブランディング支援)
課題:サービス開始から7年が経過し、機能や価値が進化する中で、その本質的な価値や将来像を改めて整理し、多様なステークホルダーへ一貫して伝えていく必要がありました。
施策:サービスのリブランディングプロジェクトとして、ブランド再定義からターゲット整理、サービスストーリー策定、トーン&マナー設計、ガイドライン整備までを実施。機能訴求だけでなく、福祉介護に関わるすべての人にやさしくゆとりある社会を目指すという価値を、体験価値として伝えるコミュニケーションへと再構築しています。
成果:ダイハツ工業株式会社に関しては、約20年にわたり継続的な伴走支援を行い、ブランドの世界観を一貫して構築してきました。本事例は、新規事業のリブランディングを通じて新たな価値創出を実現するとともに、その取り組みがダイハツというコーポレートブランド全体の価値向上にも寄与していることを示します。
送迎業務をもっとらくに。
これからの福祉介護における“あたりまえ”を伝え、
やさしくゆとりある社会への歩みを進めるリブランディング。
当社実績ページにて、詳細をご紹介していますのでぜひご覧ください。
参考事例:経営思想の観点から参考となる企業
自社の実績に加えて、経営戦略としてのコーポレートブランディングを理解するうえで参考になる企業をご紹介します。
BIPROGY株式会社(ITサービス):1988年から続いた「日本ユニシス」の社名を2022年に「BIPROGY」へと変更。パーパスの策定、長期ビジョン「Vision2030」、ロゴ刷新を一体で進め、従来型ICTベンダーから社会的価値創出企業へとブランドポジションの転換を図りました。BtoB企業の本格的なリブランディングの代表例です。同社とエンビジョンの対談コンテンツもあわせてご覧ください。(出典:BIPROGY株式会社 公式サイト)
過去と現在と未来をむすぶ文脈を紡ぎ、
組織の進化をめざすコーポレートブランディングの挑戦。【前篇】
当社INSIGHTSページにて公開しておりますので、ぜひご覧ください。
株式会社SmartHR(BtoB SaaS):機能比較に陥りやすい人事労務SaaS領域で、「ブランドコミュニケーション本部」を設置し、コーポレートブランディングからサービスブランディングまでを一気通貫で担う体制を構築。顧客接点の全体像を整理した社内資料で全社のメッセージを統一し、プロダクト・コーポレートサイト・広告・イベントで世界観を揃えました。機能の競争を超えて「企業として選ばれる」状態をつくった、BtoB SaaSブランディングの先進事例です。(出典:株式会社SmartHR 公式サイト)
中川政七商店(工芸品SPA):「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げ、理念の社内浸透を徹底すると同時に、他社の経営再生支援や合同展示会「大日本市」を通じて産業全体の活性化に取り組みました。20年で売上を約20倍に成長させ、自社のブランド活動を業界・産業全体への貢献へと広げた、経営戦略としてのブランディングの好例です。(出典:株式会社中川政七商店 公式サイト)
関連する重要な概念
コーポレートブランディングを理解するうえで、押さえておきたい関連概念をご紹介します。
- パーパス:企業がなぜ存在するのか、社会においてどのような意義を持つのかを示す言葉です。コーポレートブランディングの起点として、近年特に重視されています。
- ミッション・ビジョン・バリュー(MVV):企業の使命、目指す未来像、大切にする価値観を体系的に整理した枠組みです。ブランドアイデンティティの中核を構成します。
- インナーブランディング:ブランドの考え方を社内に浸透させ、従業員がブランドの体現者となるための活動です。コーポレートブランディングの土台として欠かせません。
- ブランドエクイティ:ブランドが持つ無形の資産価値のことです。ブランド認知、ブランド連想、知覚品質、ブランドロイヤルティの4要素から構成されると言われています。
- リブランディング:既存のブランドを時代や事業環境の変化に合わせて再構築する取り組みです。社名変更、ロゴ刷新、理念の再定義などを含みます。
まとめ
コーポレートブランディングは、企業の存在意義や提供価値を社内外に一貫して伝え、社会から選ばれる存在へと育てていく活動です。
私たちは、それを単なる見た目の統一ではなく、事業ポートフォリオの選択と集中や産業への貢献まで含んだ経営戦略の射程として捉えています。そして、知名度のある大企業だけでなく、自社の価値が正しく伝わっていない中堅・中小企業やBtoB企業にこそ、その効果は大きいと考えています。
進め方の基本は、現状分析からアイデンティティの策定、社内浸透、そして社外発信へと段階的に進めることです。一度で完成するものではなく、継続的に育てていく姿勢が求められます。
自社の「ありたい姿」を明確にし、それを社内外に一貫して伝え続けることで、企業ブランドは確かな資産として蓄積されていきます。
株式会社エンビジョンは、戦略×クリエイティブによる課題解決を通じて、企業の本質的な価値を再定義し、社会に新しい意義を生み出すブランドへと育てるクリエイティブカンパニーです。ブランディング、マーケティング、デザインに加え、財務、法務・知財、人事・労務など多様な専門性を持つチームが、戦略設計からクリエイティブの実装、社内外への浸透までを一貫して伴走します。コーポレートブランディングを通じて皆様の「ありたい姿」の実現を支援いたしますので、お気軽にお問い合わせください。