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2025/10/09
共感を呼ぶブランドストーリー戦略!重要性や作り方を解説
コラム

「自社や製品の知名度や価値がなかなか上がらない」とお悩みではありませんか?知名度や価値を向上させるためには、自社や商品、サービスの強みやこだわりなどを物語として伝える「ブランドストーリー」を作ることが効果的です。
この記事ではブランドストーリーの重要性や効果、作り方などを解説します。
Contents
ブランドストーリーはブランド価値を伝える物語
ブランドストーリーとは、自社ブランドに関する歴史や自社の強み、商品・サービスへのこだわりなどを物語として作成したものです。
単に特徴や取り組みを知ってもらうだけでなく、顧客からの共感を生むために、ブランドストーリーが役立ちます。自社の強みや魅力、価値観をストーリーに沿って訴求することで、ブランド価値や知名度を高めることが可能です。
「ストーリー(story)」と似た言葉に「ナラティブ(narrative)」があります。ストーリーが物語の内容や筋書きを意味するのに対して、ナラティブは「語られ方」を意味するものです。ある物語において、ストーリーはひとつしかない一方で、ナラティブはいくつも存在します。

引用:パナソニック サイクルテック株式会社|電動アシスト自転車 リブランディング事例

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ブランドストーリーがもたらす効果
ブランドストーリーを作成すると、認知度の向上をはじめとしたさまざまな効果が期待できます。
ここでは、ブランドストーリーがもたらす主な効果として、次の3つを解説します。
競合との差別化
市場が成熟してくると多くの企業が参入し、高品質な商品やサービスが提供されるようになります。その結果、各企業が提供する商品やサービスに機能面での差が少なくなることが一般的です。
このような状況の中で、自社ならではの価値を訴求し、競合ブランドとの差別化を図るためにブランドストーリーが効果的です。企業の価値観に顧客が共感することで、自社の商品やサービスを選んでもらえる可能性が高まります。
より多くの生活者・顧客への訴求
より多くの方から自社のブランドに好感を持ってもらうきっかけとして、ブランドストーリーが役立ちます。また、自社の提供する価値が顧客に正しく伝わり、購買行動を促進できることも、ブランドストーリーの効果です。
さらに、ブランドストーリーを通じて、自社の商品・サービスを使用することでどのようなライフスタイルや価値観を表現できるかも伝えられます。自社の独自性や特徴である「ブランドアイデンティティ」をストーリーとして効果的に伝えると、より多くの顧客を惹きつけることが可能です。
採用活動の強化
ブランドストーリーを伝えるためのコンテンツは、生活者や顧客だけでなく、就職活動をしている方への訴求にもつながります。
新卒採用を含む若年層の応募者は、企業の社会貢献性や企業理念への共感を重視する傾向があります。そのため、ブランドストーリーを通じて自社の姿勢を伝えて共感を得ることが、採用活動の強化に効果的です。
また、企業の価値観やストーリーに共感する既存社員が自社に誇りを感じたり、リファラル採用につながったりといった効果も期待できます。
採用ブランディングについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
「採用ブランディングで人材難を解決!メリットや目的、実施手順を解説」
ブランドストーリーに必要なブランド価値基準
ブランドストーリーによって自社の魅力を効果的に伝えるためには、以下の4つの価値を含めることが重要です。

機能的価値:商品やサービス自体の基本的な機能の価値
機能的価値とは、商品・サービス自体がもつ基本的な機能の価値のことです。具体的には、商品のスペックやサービスの品質、便利さなどが機能的価値に含まれます。
機能的価値の中には、ユーザーへの共感を生む要素が含まれているケースがあるため、ブランドストーリーに盛り込むことが重要です。
ただし、多種多様な商品やサービスが市場に流通している現代においては、機能的価値だけで差別化を図ることが難しい傾向があります。そのため、他の価値基準もバランスよく含めてブランドストーリーを作ることが大切です。
情緒的価値:商品やサービスのイメージに対する価値
情緒的価値とは、商品・サービスから想起されるイメージに対する価値のことです。「高級感がある」や「安心できる」「癒される」など、商品やサービスに触れたときに生まれる感情的な満足感が、情緒的価値に分類されます。
情緒的価値は、ブランドが持つ独特の世界観や歴史などをブランドストーリーに含めることで伝えることが可能です。
同じような機能的価値を持ったブランドの商品があった場合、好きなブランドの商品が選ばれる傾向があります。そのため、ブランドストーリーを通じて情緒的価値を高めておくと、顧客から選んでもらいやすくなります。
自己表現的価値:自分らしさを表現できる価値
自己表現的価値とは、対外的な評価や他者へのアピールにつながる価値のことです。情緒的価値が生活者自身の感情を満たすのに対し、自己表現的価値はブランドを所有することで自分らしさを表現する感情を満たすことを目的とします。
例えば、シンプルな暮らしを心がけている生活者向けのブランドであれば、無駄を省いたデザインやサービスを通じて得られる豊かな暮らしなどの要素をブランドストーリーに含めると効果的です。
ブランドストーリーを通じてターゲットに自己表現的価値を提供できれば、顧客との絆がより強まり、ブランドの持続的な成長にもつながります。
社会的価値:社会的集団に参加できる価値
社会的価値とは、ブランドを通じて「他者や社会とつながっている」と実感できるような価値のことです。
例えば、地元でとれた食材を使ったレストランなら、自社のこだわりや生産者との関わりをブランドストーリーで伝えることで、地産地消による地域との一体感を強化できます。
社会的価値の高いブランドの商品を購入した顧客は、同じようなアイデンティティを持つ人たちとのつながりや、所属意識を持つことが可能です。
効果的なブランドストーリーの作成手順
ブランドストーリーを作る際は、ターゲットや自社の存在意義、価値などを分析してからストーリーを構成すると効果的です。
ここでは、効果的なブランドストーリーの作成手順を4つのステップに分けて解説します。
ターゲットの設定
まずは、自社ブランドの商品・サービスを誰に売りたいのか、ターゲットとなる「ペルソナ」を設定しましょう。ペルソナとは、自社商品・サービスにおける典型的な顧客像のことです。

年齢や職業、家族構成、興味や悩みなど細部まで設定すると、その後に作成するブランドストーリーも具体的になります。
例えば、家具ブランドにおけるペルソナは以下のとおりです。
項目 | 具体例 |
---|---|
名前 | 田中良夫さん |
年齢 | 38歳 |
職業 | 会社員・営業職 |
家族構成 | 4人(妻と小学生の子ども2人) |
興味・関心 | ・休日は家族でアウトドアやDIYを楽しむ ・インテリアやエコライフ関連のSNSアカウントをフォロー |
価値観 | 子どもに環境意識を伝えたいという思いが強い |
悩み・ニーズ | ・安価な家具はデザインが良くても劣化が早い ・子どもの成長に合わせてサイズやレイアウトの変更が必要になる |
このように、自社のターゲットを具体的に設定することが大切です。
自社の存在意義や価値の分析
次に、設定したペルソナに対して約束できる自社の存在意義や価値を分析します。その際に効果的なのが、3C分析やPEST分析、STP分析、SWOT分析といったマーケティング手法の活用です。
特に3C分析は、「Customer(顧客)」「Competitor(競合他社)」「Company(自社)」の3Cにおける客観的なデータ分析が可能なため、自社の価値の分析や明確化に適しています。
分析項目 | 具体例 |
---|---|
Customer(顧客) | ・「子どもに環境意識を伝えたい」「長く使える家具を選びたい」といったニーズがある ・家具に対して環境への配慮やデザイン性を重視する傾向がある |
Competitor(競合) | ・大量生産・短期使用が前提の大手家具メーカー ・環境配慮についての発信が不十分な高級家具メーカー |
Company(自社) | ・廃材やリサイクル木材を活用し環境への負荷を最小化 ・職人によるオーダーメイド・リペアサービスを提供 |
このように、顧客や競合の状況をリサーチした上で、自社の特長やアピールできるポイントを明確にしましょう。
ブランドストーリーを作成する
ここまでの手順で明確化したペルソナや自社の価値をもとに、ブランドストーリーを作成します。
例えば、環境意識が高い家族向けの製品を開発するサステナブル家具ブランドであれば、次のようなブランドストーリーの作成が可能です。
大量生産・大量消費が当たり前の現代では、 「長く安心して使える家具が見つからない」という課題を 多くの家庭が抱えています。 そこで、私たちは「買って終わり」ではなく 「暮らしに寄り添い続ける家具」の開発を目指しました。 廃材やリサイクル木材を活用し、 経験豊富な職人が一つひとつ丁寧に仕上げることで、 デザイン性と耐久性を両立。 さらに、職人によるオーダーメイドやリペアサービスも提供しています。 「壊れた椅子を修理してまた10年使う」といった体験を通じて、 家具が単なるインテリアではなく 「家族の記憶を支える存在」になることが、 私たち家具ブランドの願いです。 |
このように、ターゲットが抱える課題から始まり、自社ブランドの取り組みや思いをストーリー形式で伝えると、価値が伝わりやすくなります。
継続的にブランドストーリーを発信し続ける
ブランドストーリーが自社のターゲット層に浸透し、認知度が高まるまでには時間がかかります。そのため、すぐに結果が出なくても諦めず、継続的に発信していくことが重要です。
ブランドストーリーは自社サイトに掲載するほか、SNSなど複数の媒体やチャネルで展開し続けると、より効果が高まります。例えば、ブランドストーリーの文章をもとに、実際に製品を作っている現場の写真をSNSに投稿したり、顧客へのインタビュー動画を発信したりすると効果的です。
このように、複数のチャネルでブランドストーリーを届けることで、新規顧客の獲得も期待できます。
ブランドストーリーを作成するときのポイント
ブランドストーリーの効果を高めるためには、自社ならではのオリジナリティを意識することや、ブランドの世界観を一貫させることが重要です。
ここでは、ブランドストーリーを作成するときのポイントを解説します。
自社ならではのオリジナリティを意識する
シンプルなブランドストーリーは顧客の心へ直感的に訴えられますが、シンプルさを追求しすぎてオリジナリティに欠けたストーリーになることは避けましょう。自社ならではの強みや魅力を正しく、かつ直感的に伝えることが重要です。
例えば、「今治タオル」ではこだわりの製法や、産地である今治の風土といった独自性をブランドストーリーとして伝え続け、高い知名度を獲得しています。

ブランドの世界観を一貫させる
ブランドストーリーは、企業が一貫して伝えるべきものです。そのため、ブランドの世界観や価値観を取り入れたストーリーを作成し、すべてのタッチポイントに反映させる必要があります。
例えば、国内の代表的なICT企業である「BIPROGY株式会社」では、2015年から「Foresight in sight」という企業ステートメントを軸にしたブランドストーリーを通じて、先見性と洞察力で新しいビジネスを切り開くという同社の強みを発信しています。社員向けのメールや中期経営計画、ブランドムービーなど、社内外に向けて一貫した世界観を伝えていることが特徴です。
当社コンテンツページにて、コーポレートブランディングに取り組んできた過去10年間の歩みをBIPROGY広報部のお三方に振り返っていただく特別対談記事を公開していますので、ぜひご覧ください。

過去と現在と未来をむすぶ文脈を紡ぎ、
組織の進化をめざすコーポレートブランディングの挑戦。
当社コンテンツページにて、記事を公開していますのでぜひご覧ください。
タッチポイントについて詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
「タッチポイント(顧客接点)とは?重要性や具体例、設定方法を解説」
ブランドストーリーを作成して自社の知名度や価値を高めよう!
ブランドストーリーとは、自社ならではの価値や特徴を物語として伝えるためのものです。競合ブランドとの差別化や、より多くの生活者・顧客への訴求、採用活動の強化などにブランドストーリーが役立ちます。
また、ブランドストーリーを作ることは、自社のイメージを生活者の心に深く根付かせる「ブランディング」の一部としても重要です。自社の知名度や価値を高めるために、ぜひブランドストーリーの作成に取り組みましょう。
当社は、ブランディング、マーケティング、クリエイティブに加え、財務、法務・知財、人事・労務などの領域横断チームを基にクリエイティブコンサルティング事業を展開しています。
成長を支えるパートナーとして、ブランド戦略立案から皆様の「ありたい姿」の実現をサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。