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2025/10/30

顧客から選ばれるバリュープロポジション戦略!作り方や事例も解説

コラム

バリュープロポジションという言葉を見聞きしたものの、どのように自社に活用すればよいかお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
バリュープロポジションとは、自社が顧客に対して提供する独自の価値のことです。バリュープロポジションを明確にすることで、競合他社との差別化が図れます。

この記事ではバリュープロポジションの定義や作り方、バリュープロポジションの活用に成功した企業の事例などを解説します。

バリュープロポジションとは?定義や重要性

バリュープロポジション(value proposition)とは、自社が顧客に提供する独自性のある価値のことです。競合他社にはない自社ならではの価値や強みがバリュープロポジションと呼ばれます。
単に独自性があるだけでなく、顧客のニーズと自社の強みが重なり合っている点が、バリュープロポジションの特徴です。自社のバリュープロポジションを把握することで、顧客から選ばれる製品・サービスの開発や販売、マーケティング戦略に活かせます。

バリュープロポジションについて説明した図

例えば、企業のマーケティングや営業、カスタマーサービス向けのプラットフォームであるHubSpotのバリュープロポジションは「使いやすいCRM(顧客管理)」です。多くの企業が抱える「複雑なCRMは使いこなせない」という課題に対し、HubSpotの強みである“直感的な操作性”で応えていることを表しています。
このように、バリュープロポジションは顧客のニーズと自社の強みが重なり合う部分を、簡潔かつ分かりやすく示すことが重要です。

バリュープロポジションに関連した言葉との意味の違い

バリュープロポジションに関連した言葉として、バリュープロポジションキャンバスやUSPが挙げられます。
各用語の意味の違いは以下の通りです。

バリュープロポジションキャンバス:活用時期・方法が異なる

バリュープロポジションキャンバスとは、自社のバリュープロポジションを整理するために使用するフレームワークです。バリュープロポジションと顧客セグメントによって構成されます。
バリュープロポジションは、市場ですでに競合他社が存在している中で、自社の価値を整理し、顧客にどのようにしてアピールするかを考えるときに使います。
一方、バリュープロポジションキャンバスは、新しい製品やサービスについて考える商品開発のタイミングで、顧客ニーズと自社の関連性を調査する場合に使うものです。

USP:目的が異なる

USPとは「Unique Selling Proposition(ユニーク・セリング・プロポジション)」の略称です。USPには、バリュープロポジションと同じく、「自社が顧客に提供する独自の価値」を意味しますが、目的や視点が異なります。
バリュープロポジションは、顧客視点での価値提供が目的の用語です。一方で、USPは企業(自社)視点で競合他社との違いや差別化できる理由などを明確にしたものです。目的に応じて使い分けが必要です。

独自性のあるバリュープロポジションの作り方

バリュープロポジションを作る際は、「競合他社が提供している価値」「自社が提供できる価値」「顧客が求めている価値」の3つの要素について考えることが重要です。
顧客が求めている価値と自社が提供できる価値が重なり合う部分のうち、競合他社には提供できない価値がバリュープロポジションとなります。

顧客が求めている価値を把握するためには、市場データの分析や顧客に対するインタビュー調査などの方法が効果的です。顧客の持つ強いニーズの中から、自社だけが価値を提供できる部分を見つけると、競合他社との差別化につながります。

顧客が求めている価値の見つけ方について説明した図

バリュープロポジション策定時に押さえるべき経営判断の注意点

バリュープロポジションを策定する際は、いくつかのポイントに注意する必要があります。
主な注意点は以下の通りです。

顧客のニーズよりも自社の意向を優先させすぎない

競合との差別化を意識しすぎるあまり、自社の想いや意向などを主軸として、バリュープロポジションを考えてしまう場合があります。
しかし、商品の機能やサービスの開発時の想い、自社の最新技術などを打ち出しても、顧客ニーズに対応することができなければ、そもそも顧客から選んでもらえません。あくまでも顧客のニーズを最優先に考えた上で、バリュープロポジションを策定することが重要です。

既存の企業資産(アセット)に固執しすぎない

自社がすでに持っている顧客データやノウハウ、技術といった企業資産(アセット)を活かすことに固執しすぎると、顧客のニーズを満たすバリュープロポジションを策定しづらくなる可能性があります。
特に、歴史のある企業ほど既存のアセットにこだわってしまう傾向があるため、注意が必要です。自社の企業資産に固執してしまうことは、新たな提供価値の創出を妨げる要因にもなります。

自社の組織力を考慮して顧客ニーズを選択する

自社の組織力を考慮して顧客ニーズを選択することも、バリュープロポジションを策定する際のポイントです。あらゆる顧客ニーズに応えようとすると、自社の組織力が追い付かなくなってしまう可能性があります。
自社のケイパビリティの範囲内で、自社の価値や強みを活かして対応できる顧客ニーズを取捨選択
して、バリュープロポジションを策定することが重要です。

自社のブランド戦略と整合性がとれているか確認する

顧客ニーズと自社が提供できる価値が合致していても、自社のブランド戦略との相違点が生じる場合は見直しが必要です。
例えば、自社が発信するブランドメッセージとして環境負荷の低減を掲げながら、同時に大量消費を促す商材を開発するといった戦略をとってしまうと、整合性がとれません。
自社のブランド戦略と一致させる形で、バリュープロポジションを策定しましょう。

バリュープロポジションの策定に成功した企業の事例

ここでは、バリュープロポジションを効果的に策定し、競合他社との差別化に成功した企業の事例として、以下の2つを紹介します。

無印良品

衣類や生活雑貨などを取り扱う無印良品では、シンプルさを追求した商品の提供をバリュープロポジションとしています。シンプルで使い勝手の良い商品が欲しいというニーズに対して、主張しすぎないデザインや素材、工程にこだわった商品を提供していることが、無印良品の強みです。

簡素なデザインや機能性を徹底するブランド戦略によって、性別や年代を問わず幅広いユーザーに選ばれるブランドとなりました。

無印良品サイト「無印良品からのメッセージ」の引用画像
出典:無印良品「無印良品からのメッセージ」

株式会社Mujin

株式会社Mujinは、産業用ロボットを自動化するシステムを開発・提供している企業です。製造現場における、産業用ロボットの自動化が難しいという企業の悩みを、簡単に解決できることが株式会社Mujinの強みとなっています。

複数のメーカーのロボットを高い精度で動かせるという、競合他社にはないソリューションが、株式会社Mujinのバリュープロポジションです。

株式会社Mujin「Mujinへの想い」の引用画像
出典:株式会社Mujin「Mujinの想い」

バリュープロポジションに関するよくある質問

ここでは、バリュープロポジションについてのよくある質問と、その回答を紹介します。

バリュープロポジションを効果的に伝える方法は何ですか?

簡潔で分かりやすいメッセージを作成し、ターゲット顧客に合わせたコミュニケーションチャネルを選ぶことが効果的です。
例えば、Webサイトのキャッチコピーや商品説明、広告キャンペーンなどでバリュープロポジションを明確に示すことで、顧客に価値を認識してもらえます。

コミュニケーションチャネルについて説明した画像

中堅・中小企業でもバリュープロポジションを作るべきですか?

中堅・中小企業でも、バリュープロポジションは作るべきです。むしろ、中堅・中小企業こそ、自社の際立った強みを打ち出すために、バリュープロポジションを積極的に活用するべきだといえるでしょう。
バリュープロポジションを明確にすることで、自社が顧客に提供できる独自の価値を整理し、競合他社との差別化が図れます。さらに、自社の強みを生かした戦略を立てやすくなり、顧客に「なぜ自社を選ぶべきか」を具体的に示すことが可能です。

中堅・中小企業がバリュープロポジションを作成する際は、ターゲットとなる顧客層を絞り込み、そのニーズに焦点を当てた価値提供を行うことが重要です。そうすることで、限られたリソースを効率的に活用し、マーケティングや営業活動の効果を最大化できます。

バリュープロポジションを策定して顧客から選ばれる企業を目指す

自社が顧客に提供できる独自の価値を表すバリュープロポジションは、競合他社との差別化を図り、自社の商品を選んでもらうために重要なものです。

顧客が求めている価値の中で、自社が提供でき、競合他社が提供できない要素がバリュープロポジションとなります。あくまでも顧客のニーズを最優先にした上で、自社ならではの提供価値を打ち出すことがポイントです。
バリュープロポジションを策定し、顧客から選ばれる企業を目指しましょう。


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