INSIGHTS

2025/04/04

「らしさ」を魅力に。ブランディング視点で想いに寄り添う伴走支援のカタチ。【後篇】

対談記事

前篇中篇と2回にわたってお届けしてきた、木又工務店代表・2代目棟梁の木又様と、エンビジョン代表取締役 井上のクロストーク。「大工のかっこよさ」、価値を正しく伝えるためのクリエイティブ、リサーチと広がったお話は、人材獲得のあり方、組織づくりへと帰結します。待遇ではなく、「ここで働きたい」という熱い思いで若者が自ら飛び込んでくる企業の在り方とは。そして、事業継承も見越した組織の事業活動の連動とは。サイトリニューアルから組織論まで自由自在に広がったトークも、いよいよ最終回です。

◼︎中篇はこちら

木又誠次 様
株式会社木又工務店 代表取締役・棟梁
一級建築大工技能士/一級建築施工管理技士/二級建築士/一般社団法人MOKスクール代表理事

1979年生まれ、四條畷市出身。大阪工業技術専門学校 卒業後、奈良・梅田工務店での修業を経て、2005年より木又工務店に入社。代表取締役 2代目棟梁。

井上大輔 
エンビジョン代表取締役

2017年、前身となるクリエイティブプロダクションの代表取締役就任、翌年MBOし独立。クリエイティブが担う領域でポジティブな未来を実現させるべくenvisionのパーパス、ナラティブをリードする。envisionと同様のパーパスを掲げる企業・個人が増えることで、社会が、日本が前進すると考えている。

「ここで学びたい」
やりがいを求める若手が自ら志望する工務店。

井上
今後の担い手、採用や人材獲得の話で言うと正攻法は採用ページの作成ですが、今回は作りませんでした。いろいろとお話を聞いていると、木又工務店のかっこよさをちゃんと定義して、それをきちんとクリエイティブで伝えていくこと自体が、採用活動につながると思ったので。

木又
うちはこの規模の会社なのでもともとハローワークなどに求人を出すこともないんですが、何年かに1回ぐらい「大工になりたいです」っていう子たちを引き取ってきた感じです。
過去に手がけた有名な飲食店も、店が良くなって評判になってくると、採用でこちらから働きかけなくても自ずと応募があったようです。募集していないのに、若手がすごい増えていました。そういう子は自分でいいとこを探しにいっているので。

僕自身、親方のところで修行したときそうだったんですが、求人していなくて断られても「給料なしでいいから修行したい」と言ったので。だから20歳の時の自分の想いを思い出すと、「どうぞ来てください」というよりも、こっちが行きたくなるような会社になった方がいいなって。
会社の規模感にもよりますが、うちぐらいなら「若手来ませんか?」って働きかけるよりも、自分たちが面白くて楽しいことをかっこよくやっていれば、「自分もやりたい」って子が来るやろうから。

意外と工務店業界でも人手不足・職人不足なんですけど、若い子を集めるために条件ばっかり良くしようとしてますよね。休みを増やしたり初任給上げたり。
それも方法としてはあるんやろうけど、自分みたいに「給料なしでもええから、ここの技術を学びたい」ってやつもちょっとはおるでしょうから。

「若手が続かない」とかいろんな話も聞きますけど、若手がもっと勝手に続けたいとか、勝手に学びたくなるように、自分たちがなっておくべきなんじゃないですかね。
今、職人不足とか若手が続かんって言ってる親父連中は、ちょっと自分を見つめ直す必要があるんじゃないかな。かっこいいことをやって真面目に仕事をしていれば、時代に関わらず若手はついてくると思っているんですよね。

井上
採用とか育成って上っ面だけの話をすると、さっきみたいに給料とか休みとか福利厚生とか、「研修用意します」みたいなことになるんですけど、本質的なところはそこではないですよね。

木又
若手の時も給料は多いに越したことはないんやけど、特にうちに来ているような若手は給料よりもやりがいを求めているような。だから、大工仕事が活きるような「いい仕事」をきちっと取って準備しといて、若いやつらにチャレンジさせるのがわれわれ親方の仕事です。
今修行中の彼らは6年修行を積みますが、その間はお金よりも経験。で、6年の修行が終わったらきちんと評価して日当の給料も上げて、他の大工さんよりは多めにもらえるようにしている。それが、いい職人が育って残っていくやり方かなと思っています。
独立もチャレンジですし、「あかんかったら戻ってきたらええやん」みたいに話しておけば若手も残っていくんじゃないですかね。

若手育てる時に重要なのは、やっぱり「愛」です。ある程度、自分の息子みたいに見ておかなきゃいけなくて、「弟子やから、社員やからええわ」というよりも、こいつは何が得意で何が不得意かぐらいは結構きちんと見ておかないと。得意そうなことにチャレンジさせて仕事を与えて、ちょっと調子に乗せたら不得意なこともしぶしぶチャレンジしだすので。そうしたらバランスが良くなっていきます。
「木又さんの若いの、よう頑張ってんなあ」とは、どこ行っても言われますね。あいつらが頑張ってくれてるから、僕は親方であるだけで勝手に評価が上がってる(笑)。

大工の歴史のように
50年、100年と受け継がれる工務店を目指して。

井上
今回はコーポレートサイトのリニューアルというアウトプットのご支援でしたが、エンビジョンがやっているのは事業がより長く続くための施策としての支援なんです。
うちは「未来のためにできることをやる。」というパーパスを掲げているんですが、その具現化のためにも、長く事業が発展し継続できる企業が増えてほしいと思っています。

木又
家もちょっとずつ、メンテナンスしながら100年保たせることができますしね。

井上
僕は事業で見ているので、そのときどきでコーポレートサイトだったりパンフレットだったり、会社のロゴだったり50周年のスローガンだったり様々です。全部取り組むこともありますが、やっているのは事業に対するアプローチのつもりです。

木又
それは大変ですね。われわれは「家を建てたい」っていうお客さんがいて、それに対して提案して家を建ててっていう感じですけど、エンビジョンさんのプロジェクトを見ると、かなり多岐に渡っていますもんね。コーポレートサイト見ていても、自動車メーカーや自治体など様々で。
毎回それを勉強しているんですから。そういうものを求めている人に、毎回何が響くのか考えるのもめちゃめちゃ大変やと思います。

井上
社会にとって必要な事業だと思ってやってますね。エンビジョンでは、Critical Creative Curlicue®(クリティカルクリエイティブカーリキュー)という事象を少し批判的に捉えて本質を炙り出すみたいな意味の考え方を持っているので、「そもそも、それを作る意味はありますか?」というところから話をして、限りある予算の中で何ができるかを考えていきます。

今回で言うと、「木又工務店のかっこよさ」の定義から、採用・育成・技術の高さを伝え、それが業界や外部パートナーの話まで波及するように、コーポレートブランディングとしてプロジェクトを整理していました。木又さんがすでにされていることが「木又工務店のかっこよさ」だったので、それを整理して、いろんな事業活動に連動させるという施策でした。その中の、コーポレートサイトを担ったというイメージです。

木又
この10年で大工の工法も技術も大きく変わりましたけど、それでも大工って1000年くらいの歴史を受け継いでいるものなので、この技術と文化のリレーをこれからも続けていくと決めています。

井上
まだ早いですが、将来お子さんに事業承継することになった時も、この辺りの話は活きてくると思います。

木又氏
そうですね、自分の大工仕事にかっこよさや魅力がないと、ついてきてもらえないのでね。一貫してそういう風に思っています。
今回はコーポレートサイトを作ってもらいましたが、この先もまだまだずっと続けることやし、「大工はこんな風にかっこよくあるべきや」「家づくりというのはこうあるべきや」みたいなものを、ブレずにずっと続けていく感じです。

それを継ぐのがうちの息子になるのか弟子になるのかはわからないですけど、息子が引き継いでくれても嬉しいし、でも彼が違うことをやりたいのなら、それはそれで何も望んでいないですしね。
だから、誰かが引き継いでこの歴史が50年、100年になり、もっと続いていくようになったらいいやろうなとは思います。

※ Critical Creative Curlicueは株式会社エンビジョンの登録商標です。