INSIGHTS

2025/04/04

「らしさ」を魅力に。ブランディング視点で想いに寄り添う伴走支援のカタチ。【前篇】

対談記事

1400年に及ぶ大工の歴史。親方から弟子へ、さらにその弟子へ脈々と受け継がれてきた伝統技術を今も守り続けているのが、大阪四條畷の大工衆「木又工務店」です。2代目棟梁の木又誠次様は、大工職人であることに誇りを持ち、ブレない想いで木にこだわった家をつくり続けてきた、生粋の大工職人です。
「かっこいいサイトを作ってほしい」とのご依頼でスタートした今回のプロジェクト、現代で活躍する大工職人の思う「かっこいい」とは、どのようなものなのでしょうか。コーポレートサイトリニューアルをご依頼いただいた木又誠次様(株式会社木又工務店)と、エンビジョン代表取締役の井上のクロストークをお届けします。

◼︎中篇はこちら

木又誠次 様
株式会社木又工務店 代表取締役・棟梁
一級建築大工技能士/一級建築施工管理技士/二級建築士/一般社団法人MOKスクール代表理事

1979年生まれ、四條畷市出身。大阪工業技術専門学校 卒業後、奈良・梅田工務店での修業を経て、2005年より木又工務店に入社。代表取締役 2代目棟梁。

井上大輔 
エンビジョン 代表取締役

2017年、前身となるクリエイティブプロダクションの代表取締役就任、翌年MBOし独立。クリエイティブが担う領域でポジティブな未来を実現させるべくenvisionのパーパス、ナラティブをリードする。envisionと同様のパーパスを掲げる企業・個人が増えることで、社会が、日本が前進すると考えている。

地域に根ざす大工工務店のかっこよさとは。
大工職人にフォーカスしたサイトリニューアル。

井上
見た目の重要度ってどう思われますか?工務店さんだと、大工さんのかっこいい写真は載せないコーポレートサイトも多いですが。

木又
それはすごく思ってて。建築家さんや設計士さんのコーポレートサイトで家の写真が前面に出るのはいいんですけど、一番大変な思いをしている作り手である大工を、もうちょっと取り上げてもらえたらなあと思ってました。リニューアル前のサイトも、割と「人」というか、大工がしっかり写るようにはしていました。前から思っていた「大工をかっこよく見せてほしいな」というのが前面に出て、写真もおかげさまで実物よりちょびっとかっこよく見えて(笑)。
幼馴染の友達で広告の仕事をいろいろしている人がいるんですが、サイト上げた瞬間にLINEが入ってきて、「どこで作ったの?」「カメラマンさん誰や?」と。やっぱりその辺は見てるんやなあと。「めっちゃええ感じやん」って言ってもらえました。

◼︎当社実績ページにて、詳細をご紹介していますのでぜひご覧ください。

「大工はかっこいい」という思いを再定義。
サイトを通じて「ええこと」が拡がっていく。

井上
「かっこいい」って、何がかっこいいのか言語化しにくい部分ではあると思います。木又さんの思う「かっこいい」もあるし、我々からみた木又さんの「かっこよさ」、社会や施主様から見た「かっこいい」もあると思います。木又さんがもともと持っている「大工はかっこいい」という思いを、再定義していくように進めました。

木又
今いちばん「大工はかっこいい」という影響を受けているのは、うちの若い弟子たちです。
あのコーポレートサイトができたことで、「すごいやん」「俺、めっちゃ写ってるやん」と思ってる。背筋が伸びるというか「やっぱり、ちゃんとせなあかん」と思ってると思います。普段から頑張ってますけど、さらに責任感を持とうとしてるんちゃうかな。自慢できるコーポレートサイトができて、仕事にも熱が入っているようです。
それを見た大工仲間の親方の弟子たちも、「うわっ、木又さんとこのサイト、めちゃかっこええやん」って多分影響受けてると思います。お互い相乗効果で意識が高くなって、技術も伸びていくんやないですかね。

これから大工になろうとしている学生の子たちもそうで、「大工って面白そうやな」って志した子があのコーポレートサイトを見ることで、さらに再認識するというか。「やっぱりかっこいい」「俺が選んだ道は間違ってなかった」って思う若い子も増えるやろうから、意味はあったと思います。
ほんまはもっとお客さんに向けて発信せなあかんのですが、これからの大工の成り手や大工業界全体に向けて発信できました。大工が仕事している風景も、かっこよく見えますもんね。

井上
きっと施主様にも、コーポレートサイトのコンテンツが木又工務店の品質として伝わっていくんですよね。きれいに材木の面が取れているとか。

木又
そうだと思います。大工の意識を高めるためとか、そういうつもりで大工のかっこよさに重きを置いてきましたけど、家を建てる人も「こんな風に家を建ててくれる人に任せたい」と感じてもらえると思う。

井上
木又さんのおっしゃる「かっこいい」という概念は、パッと見の見た目の話ではなく、木又工務店という組織の確固たる考え方になっていて、それが今回のコーポレートサイトに再定義され表現されたという形です。それが、従業員の意識や実際の品質にも影響していたり、木又さんの考えに「いいね」って共感してくれる人が増えたり、同業者に「俺らも頑張らなあかんな」って輪が広がっていって、それが施主様にも伝わってお仕事が発生したり。事業活動の全部に波及するのかなと思います。

木又
そうだと思います。「ええこと」って伝染していくんです。悪いことも、もちろんそうですけど。鳥居を直した時もそうでした。
◼︎2018年の6月の大阪北部地震により一部が損壊し、崩落の危険が生じたために解体撤去された、四條畷神社鳥居の再建。
https://kimata1975.com/caselist/nawatejinja

鳥居がなくなった当時はめっちゃ暗い空気やったんですけど、「鳥居再建、いってもうたれー!(やるぞ!)」ってやっていたら地元が「おお、木又めっちゃ頑張ってるやん」って応援してくれて。そこからいい空気が流れ出した。
コーポレートサイトも、かっこよくて良いものができたら、いいように広がっていく。いろんなもんがつながっていくように思っています。

ずっと当たり前にやってきたこだわりを言語化。
性能面も掘り下げ、価値を正しく伝える。

木又
工務店業界も、きちっとコーポレートサイトを作る人もおれば、そうでもない人も結構いますが、自分のところの魅力を発信してもらえるように、プロに頼んできちっとした良いものを作ってもらう方がいいと思います。俺ら大工は営業がいるわけでもなく、ただただひたすら毎日こつこつと家作りを進めていくだけやから、それをどう発信してもらえるか。どうやってより良く、かっこよく見せてもらえるかというのは、コーポレートサイトが一番適していると思うので。
井上さんからの提案で、性能面のことをもう少し掘り下げた話や、これまでも実際にやっているけれどあまり言ってこなかった仕事やこだわりも、載せることができました。

井上
中途半端にリニューアルしてもお金がもったいないからという意味で、かっこいい写真だけを上げ直すぐらいのものだったらやらない方がいいと、プロジェクトが始まる前の段階でお伝えしました。営業的に使えるような、施主様に必要な情報は何なのか改めて調べたり分析したりしながら、ご提案しました。それが家の性能面や営業エリアの話ですが、普通にコーポレートサイトを作るだけだったら、あまりそういう話はしない会社も多いです。

木又
今までは「聞かれたらこう答えたらええかな」ぐらいに思っていたことを、ちゃんと見えるようにするというのはすごい重要だなと思いました。家の性能自体すごく上がってますけど、お客さんの関心も上がっている。
我々のような伝統系の大工って、断熱強化や断熱材を貼るより木を削ったりしていたい。でも、断熱材もちゃんと使ったらきちっとした性能の家になるとわかりはじめて、これは価値があるものだと理解しました。前のコーポレートサイトのときは、全然興味もなくて載せていなかったんですけど、時代も変わってきたから「ちゃんときちっとやってる」ってことは載せていかないとなと思いました。

井上
木又工務店の強みって「かっこよくて、いい木を使ってて、その木を綺麗に加工できて、組み立てるだけではない」ということだと、改めて再発見できました。断熱処理や気密処理など、意外な強みや良さがあるのに、それが社会に正しく伝えられていないって思って、そこを払拭する企画や構成を考えました。
この10年ぐらいに建てた一般的な家と、直近で木又工務店で建てた家を比べたら、最新の木の家であっても一般的な家の方より木又工務店の方が暖かい家を建てられているんですよね。この辺りを木又工務店の技術力として伝えられるように工夫しました。

木又
技術自慢の大工の親父たちがまだ世の中に何人かいるんですけど、そういう人はやっぱり性能面とかが弱いんです。技術はえげつない(素晴らしい)ものを持っていますが、バランスは大事です。削りものがうまくて柱はピッカピカに削れるとしても、われわれが作ろうとしてるのは一軒の家なわけで。そういう意味では、今は性能面を強化できてきたから、料理のフルコースで例えたらすごく良い構成になってきてると思うんです。凄腕の人らでもそうだけど、自分の技術ばっかりを追い求めてちょっと固執してしまうから。もうちょっと視野を広げて、性能や全体的なバランスが良い感じに取れるようになってきたのかなと。

井上
我々のチーム内でも、木又さんのかっこよさに全員が引きずり込まれて、大工のかっこよさだけに注目しがちでしたが、アップデートされた性能面をもうちょっと訴求できるように実装を目指しました。

◼︎中篇につづく