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2026/07/30
地域の名士と地域活性化とは?名士の資産を活かす地域ブランディングの進め方
コラム

「地域の魅力をどう発信すればいいのか」「ゆるキャラや特産品をつくってみたが、一過性で終わってしまう」——地域活性化に取り組む自治体や地域企業の方から、そうした声をよくお聞きします。
私たちは、地域活性化のカギのひとつは、その地域が生んだ「名士」の存在にあると考えています。本記事では、地域の名士を起点とした地域ブランディングの考え方と進め方を解説します。
この記事でわかること
- 地域ブランディングにおける「名士」とは何か
- 地域活性化を「集客プロモーション」と捉えてはいけない理由
- 名士のストーリーを核にしたブランドのつくり方
- 名士ブランドを活かした地域活性化の施策
- 取り組みを一過性で終わらせない体制のつくり方
Contents
地域の名士と地域ブランディングとは
地域の名士とは、その地域の歴史をつくった偉人や、現代の地域を牽引するキーパーソンのことです。地域ブランディングとは、その地域ならではの価値を見出し、内外の人々が共感し誇れる「ありたい姿」として育てていく活動を指します。

ここで大切なのは、名士を「過去の偉人」として顕彰するだけで終わらせないことです。名士が持っていた(あるいは今も持っている)「人のネットワーク」「社会的な信用」「語り継がれる物語」——これらを、地域固有のブランド資源として捉え直すことが出発点になります。
最初に結論をお伝えします。名士とは、ただ称える対象ではなく、地域の未来をつくるための“資源”であり“起点”です。
なぜ今、地域の名士に着目するのか
地域の名士に着目する動きが、いま広がっています。その背景には、地域が直面するいくつかの変化があります。
- 人口減少と地方創生:多くの地域が人口減少に直面し、移住者や関係人口の創出が課題になっています。地域が選ばれるには、他にはない独自の魅力を示す必要があります。
- 似通った地域PRの限界:特産品やご当地キャラクターによる発信は広がりましたが、どの地域も手法が似通い、差別化が難しくなっています。
- 共感の時代:モノや情報があふれる時代には、機能や知名度よりも「その地域に流れる物語や価値観」への共感が、人を動かす力になります。
名士が持つ物語と信用は、こうした時代に地域を際立たせる、希少な資源だといえます。
地域活性化は「集客プロモーション」ではない
多くの地域活性化の取り組みが、「いかに観光客を呼び込むか」「いかに知名度を上げるか」という集客・宣伝の問題として進められがちです。そう思われがちですが、私たちは、地域ブランディングの本質はそこにはないと考えています。
本質は、まず地域に暮らす人々自身が、自分の地域に誇りを持てること——すなわちシビックプライド(地域への誇り・愛着)を育てることにあります。
私たちはブランディングを、「全ステークホルダーがありたい姿を共有し、組織の枠を超えて一丸となる全社変革活動」と捉えています。これを地域に置き換えれば、住民・行政・企業・教育機関などが、地域のありたい姿を共有し、一体となって育てていく“地域版の全社変革”こそが、地域ブランディングだといえます。
ここで名士が力を発揮します。名士の「ネットワーク」「社会的信用」「物語」は、ともすればバラバラになりがちな地域の関係者を束ね、共通の旗印をつくる求心力になるからです。
名士のストーリーを核にしたブランドのつくり方
名士を起点に地域ブランドを構築する流れは、企業のブランディングと共通しています。
- 文脈の掘り起こし:名士のエピソード、理念、ゆかりの地を徹底的にリサーチし、埋もれた物語を掘り起こします。
- コア価値の言語化:地域が目指すビジョンと、名士が体現したスピリッツを掛け合わせ、その地域だけのブランドメッセージを言語化します。
- 象徴化(視覚・体験):ロゴやサイン、記念館、ゆかりの特産品など、ブランドを五感で体感できる「象徴」へと落とし込みます。
- 地域内外の同志づくり:ブランド&事業に共感・共鳴するファンづくりと継続的な関係性をつくります。
- 事業モデルとしての精査:地域課題を特定し地域を活性化していく独自の事業モデルの創出と収益性を精査します。地域課題を起点に、ブランド価値を持続的な地域活性化へつなげる事業モデルを設計するとともに、収益性や実現可能性を検証します。
ここで注意したいのは、名士を美化した“作り話”にしないことです。事実に基づいた物語であってこそ、住民の共感と誇りを生み、長く語り継がれていきます。
名士ブランドを活かした地域活性化の施策
言語化したブランドは、具体的な施策へと展開します。
- 観光・産業連携:名士の足跡をたどる「歴史・文化ツーリズム」や、地元企業と組んだ「名士ゆかりのプレミアム商品」の開発。
- 情報発信:名士の物語を、SNS・映像・書籍など現代的なメディアにのせ、若い世代や地域外へ届けます。
- 関係人口の創出:名士の思想や生き方に共感する地域外の人々を、ファンや協力者として巻き込むコミュニティをつくります。
いずれの施策も、「名士の物語」という一貫した軸があることで、バラバラにならず、相乗効果を生みます。
取り組みを一過性で終わらせない体制づくり
地域ブランディングが難しいのは、担当者の異動や予算の都合で、取り組みが途切れてしまうことです。持続させるには、次の2つが欠かせません。
- シビックプライドの醸成(インナーナルブランディング):地域住民への発信や、学校での郷土史学習などを通じて、足元の人々の誇りを育てます。外向きの発信の前に、まず内側を耕すという順番が重要です。
- 産学官金の連携体制:自治体、地元企業、教育機関、金融機関が一体となって、名士の遺産(レガシー)を守り、活かす仕組みをつくります。
そして最も大切なのが、過去の名士を称えるだけでなく、「未来の地域名士」となる若手の起業家やリーダーを育てる視点です。名士は、生み出し続けてこそ、地域の力になります。
地域の名士と地域活性化の事例
徳島県・神山町(かみやまちょう)
『創造的過疎』を掲げ、IT企業と若きクリエイターが集まる奇跡の山村
深刻な高齢化に直面していた神山町は、ただ人口を維持するのではなく、持続可能な未来のために「創造的な若者や企業」を誘致する独自の地域経営に舵を切りました。
名士の事例:大南 信也 氏(NPO法人グリーンバレー)
背景と挑戦:神山町出身。早くから「創造的過疎」という概念を提唱し、単なる観光ではなく「アーティストやIT人材」など、地域に新しい価値をもたらす人材を呼び込むインフラ作りに奔走しました。
実績・意義:高速光ファイバー網の整備や古民家オフィス化を推進。その結果、東京のIT企業が次々とサテライトオフィスを開設し、多くの若手エンジニアが移住しました。さらに、2023年には未来の起業家を育てる私立高専「神山まるごと高専」を開校。彼が育てた土壌から、多くの若き起業家(未来の名士)が育ち始めています。
地域を導く“現代の名士”が、次の名士を育てる土壌までつくっている好例(徳島県・神山町)
出典情報はこちらからご確認いただけます。
岡山県・西粟倉村(にしあわくらそん)
『百年の森林構想』のもと、ローカルベンチャーが次々と生まれる奇跡の村
人口約1,400人の西粟倉村は、平成の大合併を拒否し、村の面積の約9割を占める森林を活かして生き残る独自の地域経営「百年の森林(もり)構想」を立ち上げました
名士の事例:牧 大介 氏(株式会社エーゼロ)
背景と挑戦:京都府出身のIターン起業家。村の構想に共感し、2009年に村の出資で「西粟倉・森の学校」を設立。その後、エーゼロを起業し、若者のローカルベンチャー(地方起業)を育成する仕組みを作りました。
実績・意義:ただの林業ではなく、間伐材を使った高品質なインテリア家具の製造・販売など、付加価値の高いビジネスを展開。村の外から若手起業家を誘致・育成する「ローカルベンチャー育成事業」を主導し、これまでに40社以上のベンチャー企業が誕生、総売上は15億円を超える規模に成長しました。彼自身が外から来た名士であり、同時に多くの若き名士を育てるハブとなっています。
「百年の森林構想」に共感したIターン起業家が、
間伐材の高付加価値化とローカルベンチャー育成の仕組みを築いた好例(岡山県・西粟倉村)
出典情報はこちらからご確認いただけます。
島根県・海士町(あまちょう)
離島である海士町は、深刻な人口減少に直面しながら、「ないものはない」という言葉を掲げ、地域にある価値を磨く独自の地域経営に取り組んできました。島の魅力に共感した若い移住者やIターン人材が次々と集まり、“未来の名士”が育つ土壌をつくっています。住民の誇りを核にした地域づくりの代表例です。
「ないものはない」を掲げ、住民の誇りを核に移住者を惹きつける
独自の地域経営を続ける好例(島根県・海士町)
出典情報はこちらからご確認いただけます。
なお、私たちエンビジョンも、自社の発信活動「envisionの種」を通じて、京都の地蔵盆のような地域の文化や、循環と再生といったテーマを見つめ直してきました。地域に根ざした物語を掘り起こし、現代的な意味へと翻訳していく——この営みは、まさに地域の名士を起点とした地域ブランディングと地続きだと感じています。
■ 循環と再生「京都の地蔵盆〜祈りと再生の間にある小さな循環」Vol.1(3回連載)
まとめ
地域の名士は、過去を彩る偉人であると同時に、地域の未来をつくる起点でもあります。名士が持つネットワーク・信用・物語を地域のブランド資源として捉え直し、住民の誇り(シビックプライド)を核に据えること。それが、一過性で終わらない地域活性化の条件です。
そして、過去の名士を称えるだけでなく、未来の名士を育てる視点を持つこと。それが、地域が世代を超えて輝き続けるための鍵になります。
株式会社エンビジョンは、「人を動かし、社会を動かすクリエイティブカンパニー」として、企業の経営や事業の課題と向き合い、その本質的な価値を再定義することで、社会に新しい意義を生み出すブランドへと育てるお手伝いをしています。戦略設計からクリエイティブの実装、社内外への浸透まで、多様な専門性を持つチームが一貫して伴走します。
地域ブランディングや、名士の物語を起点としたまちづくりからはじまる皆様の挑戦を、ぜひお聞かせください。