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2025/10/23
企業の目標達成を左右するKSFとは?設定方法やメリットを解説
コラム

プロジェクトの目標達成率が思うように上がらず、お悩みの方もいるのではないでしょうか。目標を達成するためには、そのための手段である「KSF(Key Success Factor)」を設定し、実行することが効果的です。
この記事ではKSFの設定方法やメリット、他の重要な指標との違いなどを解説します。
Contents
KSF(Key Success Factor)とはKGI達成のための施策や手段
KSF(ケーエスエフ)とは、企業の目標である「KGI(Key Goal Indicator)」を達成するために重要な行動や施策、手段のことです。KSFは日本語で「重要成功要因」と訳されます。
KSFの設定により、目標達成までの進捗状況を定量的に把握・管理するための指標である「KPI(Key Performance Indicator)」を効率的かつ確実に設定することが可能です。

例えば、BtoBの製造業でKGIとして「売上を20%上げる」という目標を設定している場合、KSFとして「製品の品質を向上させる」や「製造ラインの効率を上げる」といった施策が考えられます。
さらに、品質を管理するためのKPIとして「製品の不良率を1%以下にする」、効率を管理するKPIとして「製造ラインの生産性を15%向上させる」などの設定を行います。
このように、自社の目的に応じて必要な要素を考えた上で、KSFやKPIを戦略的に定めることが重要です。
企業の目標達成において重要な指標とKSFとの違い
企業の目標達成において重要な指標として、KGIやKPI、OKRなどが挙げられます。各指標の意味や関係性、KSFとの違いは以下のとおりです。
KGI(重要目標達成指標)
KGI(ケージーアイ)は「Key Goal Indicator」の略で、組織が最終的に達成すべき目標の達成度合いを測る指標です。日本語では「重要目標達成指標」と訳されます。
会社全体と、部門・現場レベルでのKGIの具体例は以下のとおりです。
| レベル | KGIの例 | 
|---|---|
| 会社全体のKGIの例 | 年間売上100億円の達成、営業利益率を10%から15%へ改善、国内シェアを5%から7%へ拡大 | 
| 部門・現場レベルのKGIの例 | 半年で5,000万円以上の新規受注、担当顧客の年間継続率95%以上、担当顧客の追加受注額1,000万円以上を獲得 | 
KGIが「達成するべき目標」であることに対し、KSFは「目標達成に必要な要因」であることが違いです。KSFはKGIの達成に必要な要素のため、KGIが決まらなければKSFを設定できません。
KPI(重要業績評価指標)
KPI(ケーピーアイ)は「Key Performance Indicator」の略で、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。最終目標であるKGIの達成に向けた進捗を数値で可視化し、客観的に把握・管理するための指標がKPIです。
KSFで定めた要素の達成度合いをはかるために、KPIは具体的な数値で設定します。また、各KPIの達成に必要な「プロセスKPI」の設定も大切です。
| レイヤー | KPIの例 | プロセスKPIの例 | 
|---|---|---|
| 会社全体 | LTV(顧客生涯価値)を前年比10%増加 | 初回購入金額:5%増加、クロスセル提案件数:四半期20%増加、アップセル商材の導入率:30%以上 | 
| 顧客維持率を95%以上に | 解約理由ヒアリング実施率:100%、主要顧客の満足度スコア(NPS):+30以上 | |
| 部門・現場 | 四半期の新規受注金額3,000万円 | 架電数:1日20件、商談設定数:月10件、成約率:30%以上 | 
| 年間の既存顧客アップセル売上1,800万円 | 既存顧客訪面談回数:月10回、アップセル成約数:月5件、アップセル購入単価:30万円 | 
KPIについての詳しい内容は、以下の記事も参考にしてください。
「KPIの目的やメリットをわかりやすく解説!目標設定のコツも簡単に紹介」
OKR(目的と主要な成果・結果)
OKR(オーケーアール)とは「Objectives and Key Results(目標と主要な結果)」の略で、目標を設定し、その達成度を測定・分析するためのフレームワークを指します。企業の達成目標に関連付ける形で、チームや個人の目標の設定が可能です。
KGIやKSF、KPIは企業やプロジェクト全体の指標であることに対し、OKRでは担当者レベルなど細かな単位での指標を設定します。KPIを達成するためには、各チームや個人がOKRをきちんと達成することが重要です。

KSFの設定で得られる効果
KSFを設定すると、プロセスの明確化やスムーズなプロジェクトの進行につながります。KSFの設定で得られる主な効果は以下のとおりです。
目標達成までのプロセスを明確化できる
KSFを設定することで、戦略の方向性が具体的に示され、社内の各メンバーが同じ目標に向かって進めるようになります。また、「行動の理由」と「到達点」が社内で共有され、効果を生み出さない活動を防止できることもKSFの設定による効果です。
一貫性のあるスムーズなプロジェクト進行が可能になる
KSFを設定すると、組織内の行動や戦略が統一され、事業全体に一貫性が生まれます。また、チーム間の連携を効果的に進め、成果を最大化する仕組みの構築が可能です。これにより、KSFの設定によりスムーズなプロジェクト進行が可能となり、持続的な成長につながります。
KSFの設定方法とポイント【事例つき】
KSF設定のフローでは、自社の状況や狙う市場、ターゲットなどについて、分析が必要になることが一般的です。分析を行う際に役立つ主なフレームワークとして、以下のようなものが挙げられます。
| フレームワーク | 内容 | 
|---|---|
| 3C分析 | Customer(顧客)、Competitor(競合企業)、Company(自社)の3つの視点から、自社と他社を比較して分析 | 
| PEST分析 | Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)という4つの視点から分析 | 
これらのほか、「5Forces分析」や「VRIO分析」などもよく用いられるフレームワークです。
ここからは、KSFを設定する流れとポイントを、以下のステップに分けて解説します。
KGIを設定する
KGIを達成するための要素がKSFであるため、まずはKGIを設定しましょう。
KGIは、達成したかを客観的に判定できる目標を選ぶことが重要です。例えば、「売上を高める」といった抽象的な目標ではなく、「売上を前年比で20%以上増加させる」など、具体的な数値を用いてKGIを設定します。
また、KGIを設定する際には「自社のありたい姿」を考慮することもポイントです。「ありたい姿」に基づいたKGIは、数値目標とブランド戦略の整合性を高めます。
例えば、自社のありたい姿が「品質で選ばれるメーカーとして高い信頼を得る」であるとします。この場合、KGIの具体例は「顧客継続率98%を維持しつつ、新規大手顧客を年間10社獲得」などが該当します。
継続率の高さが品質への満足度を表し、新たに大手顧客から選ばれることは「品質で選ばれる企業」として評価されていることを意味します。
このようにKGIは、ありたい姿と直結した具体的な成果目標として設定する必要があります。
目標達成までの工程を洗い出す
次に、KGI達成のために必要な業務工程を洗い出しましょう。例えば、「既存顧客の契約更新率98%を維持」というKGIであれば、以下のような業務工程が考えられます。
- 既存法人顧客との 定例経営会議・進捗レビューの実施
- カスタマーサクセス/アカウントマネジメント体制の強化(専任担当・複数接点確保)
- 顧客満足度調査・キーパーソンヒアリングの実施
- 調査結果に基づく サービス改善・ソリューション提案
- 利用状況・発注傾向・KPI達成度のモニタリング
- 解約兆候がある顧客に対して 経営層含む個別アプローチ・上位提案活動の実施
洗い出した工程の中で、よりKGIの達成に重要・必要な工程をKSF候補として選定します。
優先度を考慮してKSFを設定する
選定した候補の数が多い場合は、優先度の高いものを選ぶことが重要です。KGIの達成に直結する業務工程に絞って、KSFを設定しましょう。
例えば、KGIが「既存顧客の契約更新率98%の維持」であれば、既存顧客との定例会議や、KPI達成度などのモニタリング、解約兆候がある顧客に対しての個別アプローチなどが、優先度の高い施策と考えられます。
ただし、具体的な数値での評価が難しい要素は、達成の判断ができないため、KSFには設定しないようにしましょう。

経営戦略を成功させるためのKSF設定の注意点
経営戦略の成功には、短期的な目標だけでなく、企業として目指す長期的な方向性との整合性も考慮してKSFを設定する必要があります。
KSFを設定する際の主な注意点は以下のとおりです。
内部要因と外部要因の両者を考慮する
KSFを設定する際は、内部要因と外部要因のバランスをとることが重要です。自社の強み・弱みなどの内部要因と、市場環境や競合状況といった外部要因のどちらかに偏った見方でKSFを設定してしまうと、事業の成長を妨げるリスクがあります。
KSFを適切に設定するためには、内部要因と外部要因の両方を同時に分析することが重要です。内部要因を探る際には、自社のブランド価値や差別化ポイントを明確にしましょう。外部要因を分析する際には、市場での「ブランドポジション」や顧客の認識を考慮します。
いずれの場合も、データに基づいて客観的に分析を行い、判断することが有効です。仮説を立てて検証することで、KSFを適切に設定できます。

PDCAサイクルを回して定期的な振り返りを行う
KSFは一度設定したら終わりではなく、定期的に見直す必要があります。市場環境や組織内部の変化に応じて、KSFを柔軟に更新していくことが重要です。
定期的なチェックにより、時代の変化に対応できていない戦略を続けてしまうリスクを防げます。また、プロジェクト進行中に思わぬ新たな要因が発生する可能性があるため、KSFは柔軟に対応可能な形で設計することが望まれます。

他指標との流れやつながりを意識する
KSFは、KGIやKPIと一体で設定する必要があります。まずは最終目標であるKGIを設定し、それを達成するためのKSFを特定、その後KPIを立てるという流れが重要です。KGIとの関連性を無視したKSFは意味がなく、正しく運用できません。
また、KSFには数多くの要素を設定できるものの、KGIの達成に直結する要素を優先すべきです。さらに、KGIとKPIには数値化できる指標を設定し、目標達成を誰が見ても同じように判断できるようにする必要があります。
KSFに限らず、目標や指標を設定する際は、事業や企業との関連性や一貫性も意識しましょう。KGIやKPIといった経営指標とブランド戦略が一体となることで、企業の成長とブランド価値向上を同時に実現できます。
適切なKSFを設定して、KGI達成までのビジョンを明確化しましょう
KSFとは、企業の目標を達成するために重要な行動や施策、手段のことです。KSFを設定することで、目標達成までのプロセスが明確になり、プロジェクトをスムーズに進められます。
また、KSFを定め、社内の行動や戦略に一貫性を持たせることは、自社のイメージを生活者の心に根付かせる「ブランディング」においても重要です。KSFを適切に設定し、KGI達成までのビジョンを明確化しましょう。
当社は、ブランディング、マーケティング、クリエイティブに加え、財務、法務・知財、人事・労務などの領域横断チームを基にクリエイティブコンサルティング事業を展開しています。
成長を支えるパートナーとして、全社/事業ブランディング観点から皆様の「ありたい姿」の実現をサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。
 



 
