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2025/09/18

ポジショニングとは?目的や効果、具体的な方法を解説

コラム

「自社のブランドやサービスが、競合他社とうまく差別化できていない」とお悩みではありませんか。そんなときは、ポジショニングが効果的です。
ポジショニングとは、市場における自社や競合他社の立ち位置を明確にする戦略です。
この記事ではポジショニングの目的や効果、具体的な手順、失敗しないためのポイントなどを解説します。

「ポジショニング」とは?意味や目的

ポジショニング(Positioning)とは、英語で「位置づける」という意味の言葉です。
ビジネス用語としてのポジショニングには、企業やブランド、サービスの市場における立ち位置という意味があります。また、立ち位置を明確化するための工程や、目指すべきポジションに自社を位置付ける施策も、ポジショニングに含まれます。ポジショニングは、生活者を対象としたBtoCだけではなく、企業を対象にしたBtoBにおいても重要です。

マーケティング戦略を立てる際に用いられるフレームワークのSTP(エスティーピー)分析の工程でも、ポジショニングが行われます。STP分析とは、市場を細分化する「Segmentation」、狙うべき市場を決める「Targeting」、自社の立ち位置を明確化する「Positioning」の順で分析を行うフレームワークです。

STP分析について解説する画像

ポジショニングの目的

ポジショニングを行う目的は、企業やブランドの価値や個性、競合との違いを明確に打ち出し、顧客に理解してもらうことです。ポジショニングの取り組みは、ブランドの認知向上や、顧客との信頼関係の構築にもつながります。競合との違いが顧客や生活者に伝わると、商品・サービスを選ぶ理由が明確になり、結果として、利用や購買、リピート購入や顧客ロイヤルティの獲得へと結びつきます。

現代では、ほとんどの業界で市場に多くの競合他社が存在し、商品やサービスがあふれています。数ある商品やサービスの中で認知してもらうためには、ポジショニングを効果的に行い、自社ならではの価値や魅力といった独自性を伝えることが重要です。

さらに、企業や商品・サービスのブランドを見直してリニューアルするリブランディングを行う際にも、ポジショニングが有効です。ポジショニングを行うことで、ブランド戦略の改善点や新たなターゲット層、今後目指すべき方向性などが明確になります。
リブランディングについて詳しく知りたい方は、「リブランディングとは?実施するタイミングやメリット、成功事例」で詳しく解説しています。

ポジショニングで得られる効果やメリット

ポジショニングを行うメリットは、自社の強みを明確化できることや、一貫したマーケティング施策を実行できることです。
ここでは、ポジショニングによって得られる効果やメリットについて解説します。

自社の強みが明確になり、競合他社との差別化を図れる

ポジショニングを行う過程を通じて、市場における自社の位置づけや、強みとなるポイントを認識することが可能です。また、現状分析によって、自社の強みだけでなく弱みも特定し、改善施策を立案できます。競合のポジションについて理解し、競合他社とは違う視点で顧客にアプローチしたり、競争が激しいレッドオーシャンを避けたりできることもポジショニングのメリットです。

さらに、ポジショニングの取り組みは、「自社にとっての競合がどこなのか」という競合そのものの定義を再設定することにもつながります。ポジショニングを行う過程で、これまでベンチマークしていた企業やブランドよりも、自社にとってさらに脅威となる企業・ブランドが見つかるかもしれません。
新たに生まれた業界・業種が自社の競合となる可能性もあります。例えば、学習塾を経営している企業であれば、近隣にある他の学習塾だけでなく、オンライン家庭教師や学習アプリといったサービスも競合と捉えられます。

一貫したマーケティング施策を実行できる

ポジショニングには、マーケティング施策を効果的に実行しやすくなるというメリットもあります。
マーケティング施策では、自社がターゲットとする顧客のニーズを理解した上で、競合他社と比べた強みをアピールすることが重要です。そのため、自社のどのような強みを特にアピールするのか、業界内でどのような立ち位置を狙うのかなどを決めておく必要があります。

ポジショニングを行うことで、これらのポイントが明確になり、一貫性のあるマーケティング施策を実行できます。自社のポジショニングを軸として戦略を立案すれば、使用するマーケティング手法や広告媒体、ターゲット層、発信するメッセージなどを最適化できます。

差別化につながるポジショニングを行う手順

競合他社との差別化につながるポジショニングを行う手順は以下のとおりです。

  1. セグメンテーションとターゲティングを行う
  2. 現状分析を行い、ポジショニングの方向性や軸を決定する
  3. ポジショニングマップを作成する
  4. 競合調査を行い、ポジショニングマップに位置付ける
  5. 自社のポジションを決め、マーケティング施策を立案する

セグメンテーションとターゲティングを行う

顧客に自社のブランドや製品の価値を適切に理解してもらうためには、市場と顧客層について深く分析する必要があります。そのため、市場を細分化して捉えるセグメンテーションと、顧客層を分析するターゲティングが最初に取り組むべき手順です。
セグメンテーションでは、以下の4つの変数を用いて市場の細分化を行います。

変数の種類具体例
地理的変数地域、気候、人口密度など
人口動態変数年齢・世代、性別、職業、所得など
心理的変数性格、価値観、ライフスタイル、趣味趣向など
行動変数購入履歴、購入頻度、購入金額など

例えば、自動車市場の場合、雪が降る寒冷地とそれ以外の地域では売れるタイヤの種類が異なります。また、家族連れやアウトドア好きといったユーザー属性、過去に購入した車種などによっても市場の細分化が可能です。これらの細分化した市場の中から、ターゲットとなる市場を選ぶことが、自社のポジションの明確化につながります。

どの市場を狙うかを決めるターゲティングでは、6Rと呼ばれるフレームワークが有効です。6Rでは、以下の6つの観点で狙うべき市場を絞り込みます。

要素具体例
Realistic Scale(市場規模)ユーザーの数、一人当たりの消費金額など
Rank(顧客の優先順位)ユーザーの関心度、必要性の高さなど
Rate of growth(成長性)市場全体での売上高の伸び、将来性の高さなど
Reach(到達可能性)実店舗へのアクセスしやすさ、広告の出しやすさなど
Rival(競合状況)競合商品やサービスの数、商圏内の競合店舗数など
Response(反応の測定可能性)販促や広告施策の成果を数値データとして測定できるかなど

例えば、BtoBのクラウドサービスを販売する場合、IT業界や製造業界、接客業界など、どこを狙うかによって市場規模が異なります。また、請求書管理や営業支援、顧客データ管理など、提供するサービスの種類によって、顧客の優先順位や競合状況が変わります。これらの要素を比較した上で、どの市場の顧客層を狙うべきかを検討しましょう。

さらに、市場において獲得できる金額を予測する「TAM(タム)・SAM(サム)・SOM(ソム)」も、有益な指標です。これらの指標は、市場規模を段階的に絞り込むためのものであり、戦略立案の際に市場の可能性を具体的に把握するのに役立ちます。

指標意味
TAM(Total Addressable Market)新規に立ち上げた事業の市場全体で1年間に支払われる金額の総額
SAM(Serviceable Available Market)TAMのうち、実際に自社の顧客としてアプローチできる層
SOM(Serviceable Obtainable Market)ある事業が実際にアプローチできる顧客の市場規模

TAMは、リサーチ会社による調査や統計データなどを用いて推計できます。

例えば、AIシステムの市場であれば、2028年までに約2兆5,400億円まで拡大すると推計されています。このようなデータを根拠として、TAMの算出が可能です。ただし、実際には、TAMの全てを自社で獲得することはできません。そこで、TAMの内どのくらいを自社で獲得できるかを考慮して、SAMを算出することが重要です。さらに、リーチできる顧客数や、販売する商品・サービスの単価など、現実的な数値をもとにSOMを算出することで、狙うべき市場を選定しやすくなります。

参考:令和6年版情報通信白書

現状分析を行い、ポジショニングの方向性や軸を決定する

顧客層や市場が明確になったら、自社が目指すべきポジショニングの方向性を決めます。どのような顧客体験を提供するか、価格設定、サポート内容、などの観点からポジショニングの軸を決定しましょう。
例えば、企業向けのAIツールを販売する企業の場合、「操作のしやすさと、機能の豊富さのどちらを打ち出していくか」や「市場の相場と比べて安めの価格設定にするか、高めの設定にしてサポートを充実させるか」といった軸が考えられます。

ポジショニングマップを作成する

次に、市場における自社や競合他社の立ち位置を視覚的に把握するため、ポジショニングマップを作成します。

縦と横の2軸を使って、4つのポジションに分けたマトリクス図を使うことが一般的です。ポジショニングマップの軸には、前の手順で定めたものを使用します。例えば、縦軸は「機能の豊富さ」、横軸は「サポートの手厚さ」など、各社の特徴を区別できる軸を設定しましょう。
ポジショニングマップは、ExcelやPowerPointなどのツールで作成可能です。また、簡単に作成できるツールやテンプレートも多数存在しています。

ポジショニングマップについて解説した画像

競合調査を行い、ポジショニングマップに位置付ける

競合調査を行い、ポジショニングマップ内の該当する場所に位置付けましょう。
まずは、競合他社の位置をポジショニングマップに記載し、それを基に自社の立ち位置を検討することが重要です。これにより、競合と比較した視点から自社が目指すべきポジションが分かりやすくなります。

自社のポジションを決め、マーケティング施策を立案する

作成したポジショニングマップを利用して、自社のポジションを決定します。マップで空白になっている所を選ぶと、競合他社との差別化が図れます。狙いたいポジションに競合他社も位置している場合、どのようにすれば自社が優位性を持てるのかの検討が必要です。

自社のポジションが決まったら、ポジショニングをもとに商品・サービスの展開や広告、PR、店舗販売などのマーケティング施策を実行しましょう。市場の状況は日々変化していくため、自社のポジションを定期的に見直し、PDCAサイクルを回すことが重要です。

ポジショニングを失敗しないためのポイント

ポジショニングを失敗しないために注意すべきポイントは以下の3つです。

自社の理念やビジョンと整合性がとれている

ポジショニングを行う際には、マーケティング施策に一貫性を持たせるだけではなく、自社の理念やビジョン、戦略の方向性とも整合性がとれていることが重要です。
企業理念やビジョンと整合性がとれていないマーケティング戦略を行うと、生活者との認識のズレやブレにつながり、自社の強みや特徴が適切に伝わりません。差別化を図ることだけに注力するのではなく、企業理念と一貫性をもたせてポジショニングを行うことで、企業の持続的な成長につながります。

顧客視点でニーズを捉える

顧客のニーズを満たしているかという視点も、ポジショニングで重要なポイントです。競合他社が少なくても、顧客のニーズを満たしていなければ売上につながらないため、ポジショニングを行う意味がありません。
市場調査などで生活者のニーズを深堀したうえでポジショニングを行うことで、自社製品を選んでもらいやすくなります。ニーズは時間とともに変化していくため、定期的な調査とポジションの見直しを行っていくことが重要です。

自社の強みをいかせるポジションを狙う

業界によって異なるものの、自社の強みや特徴は時代や外部環境によって変化することが一般的です。そのため、ポジショニングを定期的に見直し、必要に応じて再設定する必要があります。
独自の技術力やサービス内容など、自社ならではの要素を活かすことで、ニッチなニーズや潜在的なニーズを満たせます。ポジショニングに基づくマーケティング施策を展開する際も、自社ならではの強みをアピールできるように意識しましょう。

ポジショニングを通じて競合他社との差別化を図ろう

ポジショニングとは、市場における自社や競合他社の立ち位置を明確にする取り組みです。
ポジショニングを行うと、自社の強みが明確になり、一貫したマーケティング施策を実行できるようになります。また、ポジショニングは自社の独自性やイメージを生活者の心に深く根付かせるブランディングにおいても重要です。
まずは、ポジショニングマップを作成して、現状の分析から始めてみましょう。


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