envisionの種

2026/01/27

時代の読み方:歴史をつくるブランド・デザインVol.3(3回連載)

コラム

現在、世の中には環境問題、少子高齢化に伴う地域課題など、社会課題が数多く顕在化しています。しかしながら、まだ表面化・顕在化していない課題も多く存在し、個人が日々の生活の中で感じる僅かな違和感や疑問を抱く具体的な事象がたくさんあります。私たちenvisionでは、その身近にある小さな“種”を見つけそれらの具体を抽象化し、意味のあるテーマに昇華させていきます。そして、それらのテーマを俯瞰し、深堀りし、探求したカタチを社会に積極的に発信していくことを目指しています。

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藤巻功
エンビジョンCOO兼CBO

事業成長を加速させ、人を動かす「クリエイティブのチカラ」を信じているブランディングの専門家。国内大手広告代理店等を経て、インターブランドジャパンにて戦略ディレクターとして、グローバルを含む多様な業界の大規模プロジェクトを多数リード。その後、楽天グループ、KPMGコンサルティングにてブランディング/マーケティング&クリエイティブを統括。envisionでは、社会課題を解決するWoWなブランド・クリエイティブ開発、ブランディングの民主化に邁進する。

Vol2の振り返り_未来の「変化の兆し」を妄想してみる

具体的に異なる様々な領域の現象から意外性ある共通項を見出し、「新たな意味のシステム」(ITシステムのことではなく、価値転換)を考え、時代の「流れ」を捉える試みを行いました。また二項対立の脱構築などとの関連性にも注目し考察してみました。そして、いろいろな具象の「変化の兆し」を、ブランド創りにどのように活かしていけるのか、「変化の兆し」とブランドの「らしさ」や「特徴」などとの接続点をどこに見出し、それらの兆しをどう解釈して成長に向けて動いていくべきか、などについても検討してきました。

最終号では、これまでの未来の「変化の兆し」を起点に、ブランドが創り出す世界観(=社会全体にインパクトを及ぼす未来像)の「デザイン」に至る「系譜」と、システム思考やシステミックデザインの観点からも、時代を創るブランドとこれからの未来を考えるヒントを探索していきます。

ブランドが創り出す世界観の「デザイン」に至る系譜

過去数十年間で「デザイン」の世界や定義は大きく変化してきました。デザインの対象は単なる「物」から「サービス」へ、グラフィックや広告、CI(ロゴなどに代表されるコーポレートアイデンティティ)から「経験(エクスペリエンス)」へ、UX・UIに代表されるユーザー中心主義のデザイン思考(文化人類学ではエスノグラフィー調査など)へと進化。ここでデザイン思考については少しだけ補足しておきたいと思います。IDEO(デザインコンサルティング会社:2023年11月、日本市場から撤退)を中心としたデザイン思考の考え方は、「デザイナーの思考プロセスをビジネス課題解決に応用する手法」として、近年注目を集めてきました。アイデアは構想段階において「プロトタイピング」され、人間中心、共感を特徴とし、デザインプロセスの初期段階から試されアジャイルにサービス開発していくというアプローチです。世界で注目を浴び、さまざまな企業で導入され、従来の参加型デザインとも共鳴するものでもありますが、単発のPoCやプロジェクトベースでの短期的な問題解決にやや焦点を当てがちで、長期的な戦略や社会全体の複雑な課題に対応しきれないといった点が課題として指摘もされました。ただ考え方そのものを否定されるものではなく、目的に応じて適切に活用することが大切であり、そしてどんなアプローチでも、観察者の目線や視点が重要という点は大事なポイントです。

そうした中、経営戦略の中に(広義の)デザインを埋め込んでいくデザイン経営へ、さらに現在では、スペキュラティヴ・デザイン(思考するきっかけを与え、「もし未来がこうなったら?」という「問い」を生み出し、いま私たちが生きている世界に別の可能性を示すデザインのこと)や社会システムや変革(システム思考やシステミックデザイン:後述)へと拡大してきています。このような対象の変化に伴い、「デザイン」の目的も「問題解決」から「機会発見・創出」や「望ましい長期的な未来の実現」(バックキャスティング×フォアキャスティング)へと移行してきています。このように、ブランドというものが創り出す世界観(=社会全体にインパクトを及ぼす未来像)は、広義の「デザイン」と一体となって、社会に実装され、埋め込まれていきます。こうした拡張によって、「デザイン」は、いわゆる古典的な定義(狭義のデザイン:design)における一部の専門家に閉じた領域ではなくなり、非専門家も、広義のデザイン活動(英語では頭文字を大文字にしてDesign、ビッグDのデザインとも言う)に参画する流れに至っています。

海外のデザインスクールでは、デザイナー以外にも門戸を広げたプログラムはかなり以前から存在しています。

  • ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA、Royal College of Art, イギリス・ロンドン プログラム名:  Design Engineering MA/MSc)
  • パーソンズ・スクール・オブ・デザイン(Parsons School of Design, アメリカ・ニューヨーク プログラム名: Strategic Design and Management/BBA)
  • イリノイ工科大学(IIT、Illinois Institute of Technology, アメリカ・シカゴ プログラム名:  Master of Science in Strategic Design Leadership /MS-SDL)
  • OCAD大学(OCAD University, カナダ・トロント プログラム名: Strategic Foresight and Innovation/MDes)
  • ミラノ工科大学 デザインスクール(Politecnico di Milano, イタリア・ミラノ プログラム名: Poli-design)など

また日本でも先駆的な取り組みがあります。2014年に発足した京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab(D-lab)では、世界有数の研究機関とのコラボレーションを展開し国内屈指の規模でデジタルデザインの教育・研究を行う拠点組織へと成長しています。この組織を統括されている水野大二郎教授は、10年間のD-labのプロジェクトを振り返り、次のように語られています。

「いま問われているのは、プルリバース*といわれる多元世界に向けたデザインをどう実現するのか、市場経済やテクノサイエンスをどう場所にねざした暮らしに従属させるのか、ということ。持続可能性から再生可能性、さらには望ましい生存可能性への移行を考慮しながらデザインの領域を広げていく。」(Designing Possible Futures; Kyoto Design Lab 10th Anniversary Symposium Series)

*プルリバースといわれる「多元世界」については、後述します。

そして、私も参画した2022年に開始した社会人向けエグゼクティブプログラムである「京都クリエイティブ・アッサンブラージュ」は、日本における最新の取り組みの一つです。京都大学・京都市立芸術大学・京都工芸繊維大学の3大学が連携し、人文社会学的視点、スペキュラティブなデザイン、アートの実践を通じて、新しい時代を切り開く「価値創造人材」を育成することを目的にしています。

システミックデザインという考え方 
ブランドが創り出す世界観=社会全体にインパクトを及ぼす未来像

気候変動、技術の急速な変革、レジリエンス、地政学リスク、貧困や孤児の問題など、社会に影響を及ぼす複雑かつ複合的な課題に直面する現在、多様な声を反映したデザインの重要性が指摘されています。こうした社会のシステムを対象としてきたのが、「システム思考」という考え方であり、その先駆者は、ハーバート・A・サイモンであり、『システムの科学』(稲葉元吉、吉原英樹訳)であろう。経済分野のノーベル賞をもらった経営学者であり、『経営行動』という名著によって長らく経営学や組織論の分野をリードしてきた偉人です。そして1990年代にピーター・センゲ(『学習する組織』)らにより、その原型が形づくられました。システム思考は、構成要素間の相互作用から生ずるシステム全体の振る舞いに注目することで社会構造を理解し、ステークホルダー間の対話を活性化させるアプローチです。

そして現在、欧州発祥の「システミックデザイン」という考え方が芽生えています。それは、「システム思考」と「デザイン思考」を融合させたアプローチで、「直線的な解決方法ではなく、システム全体を包括的に捉え、システム全体に変容が浸透していくことを目指したデザインを分野横断的に探索・実行すること」と定義されています。一般的にデザインは何らかの問題解決を目的とする行為と認識されてきました。しかしそのアプローチの仕方によっては、逆に問題を悪化させたり、新たな問題を生んでしまうということも起こりえます。表面的な問題現象にではなく間接的な影響関係をも考慮したうえで、社会システムそのものにアプローチする必要があり、こうした捉え方が、「システミックデザイン」です。もちろん、企業組織には実務上の制約や成果指標(KGIやKPI)があり、ゴールに向かって納得した上で事業を進めていく必要があります。これは企業の使命であり、疑いの余地はありません。ただし社会に影響を及ぼす複雑かつ複合的な課題は顕在化しており、それらの不確実性が高まっているのは事実であり、企業の「社会における真の存在意義」が問われている時代です。こうした考え方を実務にいかに実装していくかはこれからのチャレンジとなりますが、システミックデザインというアプローチは、その一助となり得る可能性が高いと考えられます。(詳しくは『システミックデザインの実践 複雑な問題をみんなで解決するためのツールキット』(ピーター・ジョーンズ(著)、クリステル・ファン・アール(著)、武山 政直(監修)2023年)

デザインと人類学が結合する!

先のシステム思考やシステミックデザインとシンクロする注目の書籍が登場したので、ご紹介します(やや難解でもあり、詳細は改めて!)。南米コロンビア生まれの人類学者であるアルトゥーロ・エスコバルが、2018年が刊行した『Designs for the Pluriverse: Radical Interdependence, Autonomy, and the Making of Worlds』(『多元世界に向けたデザイン ラディカルな相互依存性、自治と自律、そして複数の世界をつくること』監修:水野大二郎、水内智英、森田敦郎、神崎隼人、2024年)。

本書は、デザインと人類学を中心に、開発学、哲学、生態学、ラテンアメリカ研究、フェミニズム理論、仏教、音楽など様々な分野を横断しながら、西洋近代資本主義的な単一の未来ではなく、場所に根ざした複数の未来をつくるための手立てを模索しこれからのデザインのあり方に大きな問い直しを迫っています。

Pluriverse「プルリバース」。日本語にすると「多元世界」。

ユニバース(uni-verse)が世界を「単一のもの」とする見方を前提にしているのに対して、複数の世界の存在を認めるプルリバース(pluri*-verse)として世界を捉える新しい見方を指しています。

*「pluri」は英語で「数個の、多くの」の意味を持つ接頭語 

さまざまなグローバル、社会・地域課題に対して、目の前にある問題のみに注力する対症療法的な取り組みではなく、より根本的かつ本質的な原因解消として問題が生まれる関連性や包括的な構造そのものを捉え直す議論が巻き起こっています。エスコバルはそれが「多元世界の実現」であると考えており、その実現のためには自治=自律的なデザインを行う必要があると主張しています。世界を1つと捉えるユニバーサルな見方は、視点や捉え方も1つであると考える傾向となり、西洋近代の解釈を特徴づける存在論的二元論が生んだ結果について論じています。

例えば、次のような構造です。

  • 先進国 vs 第三世界
  • 近代/理性 vs 伝統/迷信 
  • 都市 vs 地方
  • 計画/開発者 vs 受益者/被開発者
  • 文化/人間 vs 自然

エスコバルはこの二元論的思考(=二項対立的な発想)が根本的に持続不可能であり、(広義の)デザインの考え方をより関係性を重視した非二元論的なアプローチに変える必要があると論じています。(二項対立の昨今の身近な事例については、前号「時代の読み方:歴史をつくるブランド・デザインVol.2」を参照ください。)

また興味深い日本における動向としては、事業やデザインを捉え直すには、従来のステークホルダーからこぼれ落ち、悪影響を受ける自然生態系や未来世代へのケアの態度と共創の視点も検討され始めています。過去や未来といった時間軸に存在する祖先や未来世代、自然や⽣き物(微生物など)といった⼈間以上の存在への関係性に注目し、ステークホルダーそのものを拡張して再定義していく動きもあります。例えば、土着の信仰、自然や文化の関わりあいを深めるフィールドワーク(例.京都・伏見のお酒と歴史、水の関わりについての探索)を行いながら、これまでの見えていた世界観や常識を捉え直して、To Beを妄想するというものです(事例:https://deepcarelab.org/project/minerva )。

LARP(Live Action Role Playing game) 
未来を考えるデザインにおける演劇の活用

さて、「LARP/ラープ」をご存知でしょうか。「LARP」という言葉はまだあまり聞き慣れない言葉かもしれません。一言で表すと、起こりうる未来を妄想するアプローチです。先にご紹介した社会人向けエグゼクティブプログラムである「京都クリエイティブ・アッサンブラージュ」の主要プログラムに組み込まれており、私も実際にこのLARP/ラープを体験し、これまでに経験したことのない刺激と洞察を得られました。その概要をお伝えします。

LARPとはなにか?なぜ、LARPなのか?

「LARP」とはLive Action Role Playing gameの略であり、ある種の即興演劇です。現実世界でプレイヤーの身体的行動を大きく伴うRPGゲームの1形態で、参加型デザインとスペキュラティヴ・デザイン(思考するきっかけを与え、「もし未来がこうなったら?」という「問い」を生み出し、いま私たちが生きている世界に別の可能性を示すデザインのこと)の融合として、異なる未来の世界観を体験するプロトタイプ手法の1つとして注目されています。

例えばこんなイメージです。50年後の近未来を妄想し、テクノロジーの発展や法改正、生活者の価値観の転換など、論文や文献をリサーチし、起こり得る未来を妄想し、テーマとある具体的なシチュエーションを設定します。事前にゲームマスター(GM) がシナリオを考案し、登場させる複数名の重要人物を選出したり、シーン割りや演出的に小道具などを用意したりします。そしてLARPの参加者それぞれが登場人物のある役=プレイヤーになりきり、実際に即興的に演じてみるというものです。ゲームマスター (GM)は、各プレイヤーにゲームの状況説明やある登場人物しか知り得ない秘密情報も指示をしていきます。これらの様子を撮影し、後に参加者が議論ポイントとなったシーンを振り返り、示唆を得ていくというものです。全く自分とは関わりのない役に憑依し演じてみることで、その立場の人間の意識や思考、感情を擬似体験していきます。なかなか言葉では伝わりにくいかもしれませんね。。。これと類似するイマーシブ・シアター(Immersive Theatre、没入型演劇作品)においても、観客が自ら行動し演者と同じ空間に同居しながら物語の一部として作品に参加することで物語世界に深く没入させることが可能となります。

実際に京都クリエイティブ・アッサンブラージュにおいて、私たちのチームが体験したことをご紹介します。

テーマを「地域住民の排外主義と​デジタルノマドとの​共存に​ついて​」とし、すでに建設が決まっているシェルターの日常の使い方について検討しました。設定は2050年のとある地方の小さな市。(1)自分視点/近視眼的視点の排外主義となる住民​目線と、(2)地域のらしさ、収益源、未来の姿など、中長期/多面的視点のデジタルノマド目線の相容れない対立構造の根本(感情、価値観の相違など)を探ってみることにしました。シチュエーションの設定に際し、事前にテクノロジーの進化や複数拠点における住民票登録の法整備に関するグローバル事例や国内動向、ノマドに関する先駆的事例の収集など、文献のリサーチを行い、前提条件を明確にしました。

このテーマ設定の意義としては、日本の地方都市の実情を目の当たりにし、地域住民との対話による合意形成のアプローチや今後の新たな地域の自律的モデルのあり方を模索するヒントとなることです。メンバーのスケジュールなどの都合上、撮影はオンラインでの実施となりましたが。結果は。。。いろんな立場のいろんな感情のぶつかり合いが生じ、当初予定していた合意形成には至らず、なんともモヤっとした後味の悪い終わり(&気持ち)となりました。これも貴重な体験となりました。実施後のリフレクション(振り返り、内省)がとても大切であり、参加者からさまざまな気づきと今後への活かし方が共有されました。

【参加者からの声】

他人を演じることの意義(抜粋)

  • 他人の立場になって、他人の思考を無理にでも想像することで、自社のことをより自由に柔軟に客観的に考え発想することも可能となる(その一助に)。一方、これはエスノグラフィーに代表される文化人類学的なアプローチだけでも体験できない稀有なもの。今後、複雑なシーンを想定しシミュレーション体験をしてみたい
  • 現実世界でも同様に強い不満を感じる人、自分を優先せざるを得ない環境にある人がいて、他人を優先する余裕がある人がそれを批判する構図があること
  • 意見の是非ではなく意見が生まれる背景や感情の構造に目を向ける視点を得られた
  • 自分の価値観や正しさから一度距離を取り、「なぜその立場に立つと、そう考えざるを得ないのか」を理解できた
  • 演技や準備を通じて、表層的な振る舞いで捉えるのではなく、各人の背景やその時々の感情との繋がりで捉えられるようになったこと
  • 排除される他者を受け入れるプロセスにおいて、受け入れる側(マジョリティ)のメリットに言及することで理解を得ようと努めてしまうこと

【参加者からの声】

このLARPの現実世界や状況との類似性(抜粋)

  • グローバル案件を進める際では、日本のGHQとアメリカ、ヨーロッパ、アジアの各リージョンの思惑との違いの露呈
  • 本社機能部門と各事業部門との目標設定や時間軸の違い(全社のパーパスと個別事業の実態との乖離)
  • 移民・外国人労働者受け入れの社会課題の表層上の排外主義ではなく、立場や生い立ち、環境による思想の違い

このLARPのビジネスへの応用の可能性

「これはどのように実際のビジネスに役に立つのか?」という疑問を持たれた方もいるのではないでしょうか?実際に体験してみて、たとえば次のようなシーンで活用できる可能性があるのではないかと考えています。

  • 50年後の未来社会と自社のありたい姿の検討(コーポレートブランディング)
  • 地域エコシステム形成や複数のステークホルダーとのプロジェクトなど、利害の異なる相手と合意する際の采配
  • 半公共的な施設における地域住民と民間企業における方向性の検討
  • 新規事業や新サービスを検討する際のモデル検討とユーザーの深層心理の洞察
  • 多様な価値観を相互に把握するチームビルディング(グローバルチーム、理念の社内浸透活動)など

LARPを通じた私なりの大きな気づきとしては、やはり、時代が変わっても、テクノロジーが進化しても、法律が制定されたとしても、結局、人間として大切にする「哲学的な問い」や「感情の苦悩や違和感との葛藤」というのはそのまま残る、というものでした。

京都工芸繊維大学の水内智英准教授は、LARPについて以下のように述べています。

「京都クリエイティブ・アッサンブラージュ」では、水野大二郎教授とともに、今後起こりうる世界観を構想し、そこに生きる人々の体験を伴ってその世界を理解するために、即興演劇的手法であるLARP(Live Action Role Playing)を取り入れた教育プログラムを展開している。即興劇を通じて、当初は想定されなかったステークホルダー間での葛藤が顕にされるのである。世界形成に影響を与えるのは、政治経済の変化や技術的発展だけではなく、それらとの関わりのうちに生きる人々の内的感情の機微でもある。私たちは、そうした翻訳が困難で個的で微視的なレベルと、時代のパラダイムのような巨視的なレベルとをいかに繋ぎ扱うことができるだろうか。」(Designing Possible Futures; Kyoto Design Lab 10th Anniversary Symposium Series)

LARPに興味のある方は、下記も参照ください。

【INTERVIEW】長谷川愛氏:人工子宮が当たり前になったら?──「PARALLEL TUMMY CLINIC」が問いかける “もしも” の世界

また未来の世界観を想像する方法としては、哲学などの古典書や歴史・推理小説を読む。そしてSFなどの映画鑑賞は王道ですね。LARP考察のヒントとなりそうな興味深い映画を2つご紹介します。2049年の未来が舞台となる『ブレードランナー 2049』と前作『ブレードランナー』の舞台となった2019年。その間に起きた物語の鍵となる出来事が短編動画となり、「2036:NEXUS DAWN」(ネクサスの夜明け)と題され公開されましたね。また『100,000年後の安全』も秀逸です。10万年もの耐久性がある世界初の放射性廃棄物の最終処分場を造るオンカロ・プロジェクトは、建築学的にも哲学的にも、これまでのどの先人の試みをも越えるものです。地中深くにある施設にカメラがはじめて足を踏み入れたドキュメンタリーです。

最後に:未来における志ある「ブランド」へ:「別日本」の可能性を探る

3回に亘って、「時代の読み方:歴史をつくるブランド・デザイン」について考察してきました。今日、「デザイン」(design)は、広告、ロゴやグラフィック、プロダクトやサービスなどの領域に留まらず、経営や社会変革、ステークホルダーの再定義、未来洞察といった「広義のデザイン(Design)」に拡張され、包括的な実践知としての役割へと進化し続けており、そして「らしい」ブランドを形成していく全ての活動(=ブランディング)と統合されつつあります。エスコバルの思考に敬意を払いつつ、脱二項対立の構築を視野に、今後も「時代の読み方:歴史をつくるブランド・デザイン」の観点から、これまでにないテーマ=自分の身近にある小さな“種”の積極的な情報発信を試み、引き続き、日本に根付く、日本のブランドの独自成長と発展の新たな可能性を模索していければと考えています。

最後に、編集工学という視点で鋭い洞察により、独自の新境地を切り拓いた故・松岡正剛翁の言葉で締めくくりたい。

「世界に別様の可能性を感じるとしたら、どうすればいいのか」

(注)本寄稿は、京都クリエイティブ・アッサンブラージュに参画し、そこでの学びや得られた示唆も盛り込んだ内容となっています。

京都クリエイティブ・アッサンブラージュ:京都大学・京都市立芸術大学・京都工芸繊維大学の3大学が連携し、人文社会学的視点、スペキュラティブなデザイン、アートの実践を通じて、新しい時代を切り開く「価値創造人材」を育成する社会人向けエグゼクティブプログラム

https://www.gsm.kyoto-u.ac.jp/collaborative-research/kca/?doing_wp_cron=1766099161.7845089435577392578125

https://assemblage.kyoto/

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