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2026/09/10

日本におけるブランディングの意味とは?のれん・三方よしから考える日本型ブランディング

コラム

「ブランディングは欧米発の手法で、日本企業にはなじまない」「良いものをつくれば伝わる、というのが日本の美徳だ」——そうした声を、経営の現場でよくお聞きします。
しかし私たちは、日本にはもともと”ブランド”に通じる豊かな価値観があったと考えています。本記事では、日本におけるブランディングの意味を問い直します。

この記事でわかること

  • 日本におけるブランディングの意味
  • 日本には古くから「ブランド」に通じる価値観があったという視点
  • 欧米型と日本型のブランディングの違い
  • 日本企業がブランディングを苦手としがちな理由と、その乗り越え方

日本におけるブランディングの意味とは

日本におけるブランディングとは、欧米で体系化された手法をそのまま移植することではありません。日本企業が古くから受け継いできた価値観——信用、長期的な関係、社会との調和——を、現代の言葉と形へ翻訳し、社内外に伝わるようにしていく営みです。
最初に結論をお伝えします。日本企業に必要なのは、ブランディングを新しく”輸入”することではなく、すでに自社のなかにある精神的な資産を、現代に通じる形へ翻訳することです。

なぜ今、問い直す必要があるのか

日本企業がブランディングの意味を問い直す必要性が、いま高まっています。

  • 世界市場での存在感:優れた技術や品質を持ちながら、その価値が世界に十分伝わっていない企業が少なくありません。
  • 「欧米に追いつく」アプローチの限界:戦後の日本企業は、欧米流のやり方を手本とし、それに追いつくことに軸足を置いてきました。しかし、成熟した市場と成熟した社会のなかで、その延長線上に答えはありません。いま必要なのは、模倣や追随ではなく、日本らしい特徴を活かした新しいモデルを自ら描くことです。
  • 人材獲得と事業承継:理念や価値観への共感が、採用と承継の両面で問われるようになりました。

日本には古くから「ブランド」の思想があった

「ブランディングは欧米の手法」と思われがちです。
そう思われがちですが、私たちは、日本にはむしろ古くからブランドの本質に通じる思想があったと考えています。

  • のれん:屋号への信用そのものを資産とみなす考え方です。今日「のれん代」という会計用語が残るように、目に見えない信用に価値を認めてきました。
  • 家訓・店則:老舗が代々受け継いできた家訓は、現代でいうパーパスやバリューにあたります。何を大切にし、何をしないかを言葉として残してきました。
  • 三方よし:近江商人が掲げた「売り手よし、買い手よし、世間よし」は、まさに今日のステークホルダー主義と重なります。
  • 信用と長期の関係:一度の取引の利益より、長く続く信頼を重んじる姿勢です。

これらは、いま世界のブランド論が語っていること——パーパス、ステークホルダー主義、長期的なブランド資産——と驚くほど重なります。
日本企業は、ブランドの思想を持たなかったのではなく、それを”ブランディング”という言葉で語ってこなかったのです。

欧米型と日本型のブランディングの違い

両者の傾向を整理すると、次のようになります。

観点欧米型日本型
起点戦略的に設計し、定義する事業の営みのなかに自然と宿る
表現明確に言語化し、主張する語らずに、行いで示す
時間軸中期での成果を重視長期・世代を超えた継続
評価軸数値化されたブランド価値信用・のれん・世間からの評判
得意なこと可視化・体系化・発信品質・誠実さ・信頼の蓄積

どちらが優れているという話ではありません。日本型には、蓄積された信頼という強みがあります。ただ、それが言語化されず、可視化されていないという弱点を抱えているのです。

日本企業がブランディングを苦手とする理由

日本企業がブランディングを苦手としがちな理由は、いくつかあります。

  • 謙譲の美徳:自ら誇ることを控える文化が、価値の発信をためらわせます。
  • 「良いものをつくれば伝わる」という前提:品質への誇りが、伝える努力の軽視につながることがあります。
  • 暗黙知への依存:大切な価値観が言葉にされず、現場の空気として共有されているため、社外や次世代に伝わりません。
  • ブランドを「装飾」と捉える誤解:ロゴや広告の話だと見なされ、経営課題として扱われにくいのです。

日本の強みを活かすブランディング

日本企業のブランディングは、次の順で進めるのが有効です。

  1. すでにある価値を掘り起こす:創業の想い、家訓、現場のこだわりを、第三者の視点も借りて言葉にします。ゼロから作るのではなく、あるものを見つける作業です。
  2. 現代の言葉へ翻訳する:それを、いまの社会やステークホルダーに通じる言葉(パーパス・バリュー)へと置き換えます。
  3. 可視化し、発信する:謙譲を美徳としつつも、伝えるべきことは伝える。誇張ではなく、事実の可視化です。日本企業には、カルチャーを重んじ、多様なものを受け入れる柔軟さもあります。異質なものを排除せず、自らのなかに取り込んで独自のものへ育ててきた——この柔軟さこそ、発信すべき強みのひとつです。
  4. 世代を超えて受け継ぐ:長期の視点という日本企業の強みを、ブランド資産の蓄積として活かします。

事例

近江商人「三方よし」の系譜

近江商人の「三方よし」の精神は、今日の総合商社や老舗企業の経営理念に受け継がれています。売り手と買い手だけでなく、世間(社会)の利益まで含めて考えるという発想は、現代のステークホルダー主義やサステナビリティの議論を先取りしていたといえます。

長寿企業に残る家訓

日本は創業100年を超える企業が世界で最も多い国とされています。その多くが、家訓や店則という形で、何を大切にし、何をしないかを言葉で残してきました。これは、パーパスやバリューを何世代にもわたって継承してきた実践そのものです。

なお、私たちエンビジョンも、日本企業のブランディングに伴走するなかで、繰り返し同じ場面に出会います。「うちには語れるものが何もない」とおっしゃる企業ほど、実は語るべき価値を豊かに持っている、という場面です。それは、当たり前になりすぎて、本人たちが気づいていないだけなのです。掘り起こし、現代の言葉へ翻訳する——それが、日本におけるブランディングの中心的な仕事だと考えています。

まとめ

日本におけるブランディングとは、欧米の手法を輸入することではなく、すでに自社のなかにある精神的な資産を、現代に通じる形へ翻訳することです。
のれん、家訓、三方よし——日本には、ブランドの本質に通じる思想が古くから息づいてきました。
足りないのは思想ではなく、それを言葉にし、可視化し、伝える営みです。
「良いものをつくれば伝わる」から一歩踏み出したとき、日本企業のブランドは、その本来の価値にふさわしい評価を得られるはずです。


株式会社エンビジョンは、「人を動かし、社会を動かすクリエイティブカンパニー」として、企業の経営や事業の課題と向き合い、その本質的な価値を再定義することで、社会に新しい意義を生み出すブランドへと育てるお手伝いをしています。戦略設計からクリエイティブの実装、社内外への浸透まで、多様な専門性を持つチームが一貫して伴走します。

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対応できるご相談

エンビジョンは、たとえば次のようなご相談に対応しています。

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  • リブランディング:事業転換・周年・事業承継を機にしたブランドの描き直し
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  • 採用ブランディング:EVP(従業員価値提案)の構築、採用力の強化
  • 事業・製品ブランドの定義:新規事業や新製品のコンセプト設計
  • クリエイティブ制作:ブランド戦略にもとづくVI・ロゴ、Webサイト、動画、3DCG、各種ツール

株式会社エンビジョン(envision Inc.)

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  • 沿革:1981年創業のクリエイティブプロダクションを母体とし、2018年のMBOを経て、2023年に「株式会社エンビジョン」へ社名変更(第二創業)。
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