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2025/06/10

従業員エンゲージメントとは?企業での向上施策やメリットを解説

コラム

従業員エンゲージメントという用語を見聞きしたものの、「なぜ従業員エンゲージメントを高めるのか?」「どのように高めるのか?」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
従業員エンゲージメントとは、社員が企業の経営理念やビジョンに共感し、貢献したいと自発的に思う意欲のことです。従業員エンゲージメントを高めることは、定着率や生産性の向上につながります。

本記事では、従業員エンゲージメントの構成要素や向上させる効果・メリット、従業員エンゲージメントを高める方法などを解説します。

従業員エンゲージメントとは?

従業員エンゲージメントとは、従業員が会社の経営理念やビジョンに共感し、業績向上や組織の目標達成のために自発的に貢献したいと思う意欲のことです。

米ギャラップ社が世界の企業を対象に実施したアンケート結果では、日本企業の従業員エンゲージメントは139か国中の132位と世界最低の水準でした。そのため、従業員エンゲージメントの向上は、日本企業の経営課題の一つとなっています。
こうした背景から、国内企業において、従業員エンゲージメント向上に向けた取り組みが活発になっています。

従業員エンゲージメントを構成する要素

従業員エンゲージメントは、企業理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)などへの理解度、会社への帰属意識などいくつかの要素から構成されます。
ここでは、従業員エンゲージメントの構成要素を解説します。

企業理念やMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)などへの理解度

従業員が企業理念やMVV、事業内容などの取り組みに対する理解度が、従業員エンゲージメントの構成要素の一つです。
理解度が高まると、企業と従業員が目指す方向性が一致し、従業員がより主体性を持って業務に取り組みやすくなります。
企業理念やMVVなどへの理解度を高めるためには、面談による理解度の確認や、社内研修の定期的な実施などが効果的です。

帰属意識

帰属意識とは、自分が企業や部署の一員であるという自覚や、上司やメンバーとの結びつきの強さを指します。
帰属意識が強まると企業への共感や貢献意欲が高まり、従業員エンゲージメントの向上につながります。また、心理的な安心感が生まれることで発言しやすくなり、社内のメンバー同士のコミュニケーションを活性化させ、組織としての一体感が高まります。

行動意欲

行動意欲とは、従業員が組織の成功や目標達成に向けて、自発的に行動する意欲を指します。一般的に、会社の取り組みへの理解度が高まることで共感度も向上し、行動意欲へとつながります。
従業員の行動意欲を高く保つためには、適切な人事評価や、従業員が働きがいを感じられるような取り組みを継続する必要があります。

混同しやすい言葉との違い

従業員エンゲージメントと混同しやすい言葉に、従業員満足度やモチベーション、ワークエンゲージメントなどがあります。

  • 従業員満足度
  • モチベーション
  • ワークエンゲージメント
  • コミットメント
  • ロイヤリティ

これらの言葉と従業員エンゲージメントとの違いは以下のとおりです。

従業員満足度職場の人間関係や職場環境、仕事の内容などに対する満足の度合いを指す言葉です。従業員満足度は「ES(Employee Satisfaction:エンプロイーサティスファクション)」と呼ばれることもあります。

従業員満足度が向上しても、必ずしも企業に貢献する意欲につながるとは限らない点が、従業員エンゲージメントとの違いです。
モチベーション動機付けややる気などといった、従業員自身の心理状態を指す言葉です。

モチベーションには会社の発展だけでなく、給料や待遇、仕事のやりがいなど幅広い対象への意欲が含まれます。一方、従業員エンゲージメントは会社の発展に対して貢献したいという意欲を指します。

両者の概念は異なりますが、モチベーションの向上が従業員エンゲージメントの強化につながります。
ワークエンゲージメント仕事に対する活力や熱意、没頭する度合いなどを指します。従業員エンゲージメントが会社への貢献意欲を指すのに対して、ワークエンゲージメントは仕事自体への意欲を意味する点が両者の違いです。
コミットメント企業が提示した成果や仕事内容などに対して、従業員が応えている状態を指します。コミットメントは、会社が従業員に対する要求を行い、従業員がそれを承認するというプロセスを含んでいる点が、従業員エンゲージメントとの違いです。

ただし、コミットメントは従業員エンゲージメントを高める要因になります。そのため、コミットメントを向上させていく取り組みが重要です。
ロイヤリティ組織などに対する忠誠心を指します。ロイヤリティが高ければ企業への貢献につながります。しかし、企業と従業員の間に主従関係が存在するため、指示がなければ行動しないという状態になる場合もあります。

ブランドロイヤリティという表現は、従業員エンゲージメントと近しい意味になると考えます。ブランドロイヤリティは、従業員エンゲージメントが向上した結果、高まるものと捉えるとより理解しやすいでしょう。

従業員エンゲージメントが重要視される理由

従業員エンゲージメントは、人材の確保や生産性の向上、従業員のモチベーションの維持のために重要視されています。
ここでは、従業員エンゲージメントが重要視される理由を解説します。

人材を確保するため

従業員エンゲージメントを高めることは、企業への定着率を高め、人材を確保するために重要です。
近年、転職や再就職が一般的になったことで、人の流動が大きくなっています。そのため、優秀な人材を獲得し、離職を防ぐ必要性が高まっていることが、従業員エンゲージメントが重要視されている理由です。

従業員の生産性を向上させるため

経済産業省の資料によると、国内企業を対象に実施した調査の結果、従業員エンゲージメントのスコアと営業利益率、労働生産性の間に相関関係がみられました。
この調査データから、従業員エンゲージメントを高めることは、従業員の営業利益率や労働生産性の向上、そして企業の業績向上につながると考えられます。

従業員の生産性を向上させ、会社の経済的な成果につながることも、従業員エンゲージメントが重要である理由の一つです。

従業員のモチベーションを維持するため

経済産業省がコロナ禍初期に実施したテレワークに関する調査では、「相手の気持ちが察しにくい」「仕事をさぼっていると思われていないか」という回答が約4割を占めていました。当時はテレワークの導入が急速に進んだこともあり、従業員の不安やモチベーション低下が課題でした。

2025年現在は、業界や業務特性に応じて、テレワークをポジティブに活用している企業も増えています。このような多様な働き方をサポートし、従業員のモチベーションを維持するためにも、従業員エンゲージメントを向上させる取り組みが重要です。
例えば、従業員同士がコミュニケーションを取りやすい環境を整えたり、適切な評価制度を導入したりするなどの取り組みが、従業員のモチベーション維持につながります。

従業員エンゲージメントを向上させる効果・メリット

ここでは、従業員エンゲージメントの向上で得られる効果やメリットについて、企業側と従業員側に分けて解説します。

企業におけるメリット

従業員エンゲージメントを高める企業側のメリットは、優秀な人材の確保や離職率の低下につながることです。また、従業員の営業利益率や労働生産性が向上し、会社の業績が向上する効果も期待できます。
従業員エンゲージメントを向上させ、従業員一人ひとりのパフォーマンスが上がると、結果として顧客満足度の向上や企業の信頼性向上といったメリットにもつながります。

従業員におけるメリット

従業員エンゲージメントを高める従業員側のメリットは、仕事へのやりがいを感じられる状態になることです。また、会社側が従業員エンゲージメントを高めるために行う施策を通じて、ライフワークバランスを保ちやすくなったり、業務におけるストレスが緩和されたりする可能性があります。

また、従業員の自発的な行動により、キャリアアップや新たなスキルの獲得につながることも従業員エンゲージメントの向上で期待できる効果です。

従業員エンゲージメントを向上させるメリットを表す図

従業員エンゲージメントを高める方法・施策例

従業員エンゲージメントを高める方法には、様々なものがあります。主な施策例は以下のとおりです。

ミッション・ビジョン・企業理念を共有

企業理念や経営者の考えが社内に浸透していないと、従業員は会社が何を目指しているのかわからず、従業員エンゲージメントが下がってしまいます。そのため、企業のミッション・ビジョンや企業理念を明確化し、従業員に共有する必要があります。

共有方法は、キックオフミーティングや社内報、オウンドメディア、社長スピーチなどが挙げられます。また、自社の従業員エンゲージメントを調査して現状を把握した上で、自社のカルチャーや実情に即した企業理念などを浸透させる施策も効果的です。

人事評価制度の見直し

人事評価の基準が曖昧では、従業員が正当に評価されていないと感じ、従業員エンゲージメントが低下するリスクがあります。そのため、定量的な成果に加えて、企業理念の体現度や業務プロセスなども考慮して、企業への貢献度に応じた人事評価を行うことが重要です。

人事評価の手法には、「360度評価」や「コンピテンシー評価」など、さまざまな種類があります。既存の人事制度にとらわれず、評価方法を柔軟に見直してみましょう。

キャリア形成の支援を強化

キャリアデザイン研修や階層別研修などを通じて従業員の成長を支援することも、従業員エンゲージメントを高めるために効果的です。

従業員が会社から「大切にされている」「期待されている」と感じることで、満足度や帰属意識が向上しやすくなります。また、従業員のスキルアップは、会社側にとっても有益です。
具体的には、提携キャリアコンサルタントによるサポートや、資格取得費用の支援などが挙げられます。また、キャリアに関する相談体制の強化や、社内公募制度の導入なども、従業員のキャリア形成につながります。

ワークライフバランス向上のため柔軟な働き方を実現

ワークライフバランスを実現しやすい職場では、従業員エンゲージメントが向上しやすいことが一般的です。仕事にやりがいを感じられていても、残業が多いなど働き方に不満があると、従業員エンゲージメントは高まりません。そのため、職場環境や福利厚生を整備することが重要です。

例えば、リモートワークやフレックスタイム制の導入などが挙げられます。柔軟な働き方を実現できる環境を整え、ワークライフバランスの向上に取り組みましょう。

社内のコミュニケーションを活性化

社内のコミュニケーションを促進することも、従業員エンゲージメントを向上させる方法の一つです。従業員同士が良好なコミュニケーションを取れれば、ストレス軽減やハラスメント防止などの効果が期待できます。また、会社への好感度が高まったり、愛着が深まったりしやすくなります。
特に、リモートワークが普及している場合には、従業員同士がコミュニケーションを取りやすい環境を積極的に作る必要があります。

具体的には、カフェスペースやミーティングブースの設置などオフィス環境の改善が効果的です。また、ランチ会やオンラインでの1on1、社内SNSの活用、オンライン交流会などの実施もコミュニケーションの活性化につながります。

社内のコミュニケーションが活性化している様子

従業員エンゲージメント向上施策の実行プロセス

従業員エンゲージメントの向上に取り組む際は、効果的なやり方で施策を進めることが重要です。
ここでは、従業員エンゲージメントの向上施策を実行するプロセスを解説します。

現状調査

まずは、従業員と組織のつながりを測定する「エンゲージメントサーベイ」や、従業員へのヒアリングなどを行い、現在の従業員エンゲージメントを把握しましょう。エンゲージメントサーベイは、インターネットを用いたアンケート形式の調査方法のため、従業員数が多い企業やリモート環境でも取り組めます。

分析・課題の特定

次に、従業員エンゲージメントの調査結果をもとに、現在の状態を分析しましょう。従業員が会社に対して何を期待しているか、職場でどのようなことに不満を持っているかなどを課題として抽出し、優先順位をつけます。

解決策を選定・実行

優先順位の高い課題から、解決策を選定します。課題を解決するために取り組む施策を決めたら、達成までの期間や成果を測るための具体的な指標、中間目標などを策定し、実行に移しましょう。

PDCAサイクルを回し改善

部署や仕事の状況、従業員ごとの感じ方などが異なるため、施策を1回実行するだけで全体の従業員エンゲージメントが大きく高まるとは限りません。実行結果を振り返って改善点を見つけ、再び実行に移すPDCAサイクルを回すことが重要です。

単に同じ施策を繰り返すのではなく、成果が出ていない部分を特定した上で、結果に応じた施策の変更を行い改善していきましょう。

従業員エンゲージメント向上施策の実行プロセスを表す図

従業員エンゲージメントの高い会社作りは、強いブランドにつながる!

社員が企業の経営理念やビジョンに共感し、自発的に貢献する意欲を表す「従業員エンゲージメント」は、人材確保や生産性向上のために重要です。

従業員エンゲージメントを向上させることで、離職率の低下や業績の向上、従業員のモチベーション向上など様々なメリットが期待できます。今回ご紹介した施策例や実行プロセスを参考に、従業員エンゲージメント向上のための施策に取り組んでみてはいかがでしょうか。
企業内で施策実行が難しい場合は、外部の専門家やコンサルタントの力を借りるという選択肢もあります。


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