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2025/08/07

組織開発とは?企業の目的や人材開発との違い、プロセスを解説

コラム

組織開発は、企業全体の成長を促進し、従業員間の連携や生産性を向上させる有効な手法です。しかし、「どこから始めればよいのか」「具体的なプロセスがわからない」と悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では、組織開発の基本概念から具体的なプロセス、成功事例までを徹底解説します。

組織開発の基本概念とその重要性

組織開発とは、企業における人間関係や部署間の連携や組織構想を改善・強化し、組織内の生産性やパフォーマンス、結びつきを向上させる取り組みです。組織の柔軟性や変化への対応力を高めたり、コミュニケーションを円滑にして信頼関係を構築したりできます。
継続的な施策の実施により、組織の活性化や生産性向上、従業員の定着率改善といった成果が期待できます。

生産性向上とエンゲージメント強化をもたらす

組織内の部署やメンバー同士の連携を活性化し、目標を持って組織の課題を解決することで、生産性やパフォーマンスの向上につながります。組織開発に成功すれば、連帯感や一体感が高まり、従業員の仕事への意欲(エンゲージメント)が向上する可能性があります。

組織開発と人材開発の違い

組織開発と人材開発の大きな違いは、対象が誰であるか、という点です。組織開発は「人と人とのつながり」や「部署間の関係性」など、組織内の相互作用です。一方、人材開発は「一人ひとりの従業員」すなわち、個人の成長や能力に着目します。
さらに、それぞれの目的も異なります。組織開発は「組織全体のパフォーマンスや結束力の向上」を目指し、人材開発は「個人の能力向上」に焦点を当てています。

組織開発と人材開発の違いを表す図

組織開発が求められる時代背景と経営課題

組織開発が注目される理由として、ビジネス環境の変化が挙げられます。近年、競争環境の激化やテクノロジーの進化により、生産性の向上・効率化が強く求められています。
また、優秀な人材を確保し、離職率の増加を防ぐためには、魅力的な職場環境の整備や従業員の成長機会の提供が不可欠です。さらに最近では、SlackやZoomなどのデジタルツールの活用が一般化し、コミュニケーションの方法も多様化しています。

こうした経営課題を解決するためには、顧客に選ばれる企業を目指し、競争優位性を築くためのブランディング戦略が重要です。さらに、効率的なマーケティング活動でリソースの無駄を削減し、限られた予算で最大の成果を上げるために、マーケティング組織の開発が欠かせません。
競争力のある製品やサービスを効率的かつ効果的に開発するためには、クリエイティブ組織の強化が求められます。

組織開発を成功に導くプロセス

ここでは、組織開発を成功に導くプロセスを解説します。

  1. 目標決定
  2. 課題の明確化と優先順位の設定
  3. 施策の試験的実施
  4. データに基づく効果測定と継続的な改善
  5. PDCAサイクルで持続的に進化

目標決定

企業の長期的な経営戦略に基づき、組織開発を通じて達成したい具体的な目標やゴールを明確にして、方向性を定めましょう。目標を明確にしないまま進めると、施策が分散して効果が薄れる可能性があります。

課題の明確化と優先順位の設定

目標をもとに、企業の状態や課題を洗い出して明確化します。アンケートやヒアリング、1on1ミーティングを実施して、従業員のリアルな意見を汲み取ることが大切です。
課題は「優先度・緊急性の高いもの」と「時間をかけて解決すべきもの」に分類し、段階的に優先度をつけて取り組むことで、効率的に課題解決が進みます。

施策の試験的実施

社内の現状を把握したうえで、設定した課題を解決するための施策を考案し、試験的に実施します。全組織を挙げていきなり本格導入すると、効果の検証に時間がかかったり、急なトラブルへの対処が追いつかなくなったりする可能性があります。そのため、最初は一定の期間を設け、狭い範囲で施策に取り組むことがおすすめです。

データに基づく効果測定と継続的な改善

試験的に施策を実施したら、その施策の効果を測定します。測定した効果をもとに、定期的に現場と経営層でミーティングを行い、成果を報告します。

PDCAサイクルで持続的に進化

目標設定から効果測定までを経たら、経営層からのフィードバックをもとに、PDCAサイクルを回しましょう。必要に応じて追加の調査を行ったり、新たな施策を実行したりして、その都度効果を測定し、改善を重ねていきます。当初の小規模な施策を、次第に全社に拡大していき、少しずつ確実に課題の解消を図っていきます。

組織開発を成功に導くプロセスを表す図

組織開発を加速させるフレームワーク

組織開発を効果的に進めるための代表的なフレームワークを以下に紹介します。

組織開発を行う目的や、求める効果にあわせたフレームワークを選択してください。

MVV:理念を基盤に企業文化を育てる

MVVとは、以下のように企業の経営理念を示すもので、企業の経営戦略や従業員の行動の方向性を決めるために必要です。

  • ミッション(Mission):企業や組織が社会に対して果たすべき使命や存在意義
  • ビジョン(Vision):企業や組織が中長期的に目指す目標
  • バリュー(Value):企業が大切にしている考え方や行動の価値観

組織開発の際、MVVは企業が目指す姿やあり方を考える際に役に立つため、組織開発に積極的に活用することをおすすめします。

OKR:組織全体の進捗を可視化する

OKRは高い頻度で「目標設定」「調査」「評価」を行うことが特徴で、組織・部署・チーム・個人の階層に分けて、それぞれの目標を管理します。目標と成果指標を階層ごとに設け、定期的に進捗確認を行いましょう。

タックマンモデル:チームの成長を促進する

タックマンモデルは組織の成長段階を示すフレームワークで、以下のように5つの段階に分けられます。

  • 形成期:チームの形成初期
  • 混乱期:メンバー同士が衝突しやすい時期
  • 統一期:メンバー間で共通の規範が生まれる時期
  • 機能期:チームとして円滑に機能し、成果を上げる時期
  • 散会期:チームの解散時期

それぞれの段階での状況に応じて適切な対策を取ることで、理想の組織編成を目指しましょう。

コーチング:従業員の潜在能力を引き出す

コーチングは積極的に答えを教えるのではなく、「その人の中に解決策がある」というスタンスで相手の話をよく聴いたり観察したり、ときに相手の内面にある答えを引き出すように提案したりするコミュニケーション手法です。
もとは人材開発の手法でしたが、潜在能力を引き出してモチベーションを高めることで従業員同士の結束が強まり、生産性向上につながることから、組織開発でも用いられるようになりました。

AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー):組織文化を醸成

AIは、会社が掲げる課題ではなく、従業員自身が自分のなりたい姿や価値観を掘り下げて、可能性を広げるフレームワークです。
従業員が自らの強みやポテンシャル、目標や理想像などを再発見・共有し、前向きな組織文化を作り上げながら、さまざまな成功事例を財産として蓄積できることが特徴です。

経営者が押さえるべき組織開発成功のポイント

組織開発は効果が出るまでに時間がかかり、かつ組織基盤を整えるところから取り組む必要があるので、経営層の参加が重要となります。また、組織開発は社内の状況や環境に合わせて、柔軟な対応を取ることが大切です。

当初の計画がうまく進まない場合や、従業員からの反応がよくない場合、無理に計画通りに進めると現場の反感を招く恐れがあります。社内に組織開発の経験者がいない場合や、計画が思い通りに進まない場合は、外部のコンサルティング会社に頼ることも一つの選択肢です。

組織開発に成功した企業事例

組織開発に成功した企業事例を4つご紹介します。

株式会社ふらここ

株式会社ふらここは、ひな人形や五月人形など日本人形の製造・販売を行う企業です。例年11月から4月までの繁忙期に部署間で業務量が偏り、人事評価や労働時間に対する不満が生まれたことから組織開発に着手。
雇用形態を問わず、全従業員が業務内容を互いに情報共有・意見交換する従業員総会の開催や、社会保険への加入や賞与・退職金が支給される環境を整えました。

出典元:中小企業庁「株式会社ふらここ(事例1-1-1)」

株式会社半谷製作所

株式会社半谷製作所は、金属プレス加工製造を得意とする1次サプライヤーです。「生産状況の見える化」を重視した組織開発に着手し、現場の問題点や改善事項を徹底的にヒアリング。現場業務をフローチャート化して課題や解決策を洗い出し、現場に合うシステムを導入したことで、今では時間当たりの出来高や生産ラインごとの一人当たりの生産性なども見える化できました。

出典元:中小企業庁「株式会社半谷製作所(事例2-2-20)」

重光産業株式会社

重光産業株式会社は熊本で誕生した総合食品製造メーカーで、「味千ラーメン」というチェーン店を展開しています。「現場のモチベーションを高めるのはフランチャイズである」という考えのもと、現地を知る信頼できるパートナーと提携し、オーナーや従業員のモチベーションを高めることを重視。
高いロイヤリティーを設定せず、現地のパートナーも納得して営業できるような体制を整えたことで、国内外で700店舗以上を運営するほどの販路拡大に成功しました。

出典元:経営者通信Online「熊本発「味千ラーメン」が中国に広まった理由」

株式会社あべはんグループ

株式会社あべはんグループは岩手県に位置する食鳥処理業者で、将来の幹部候補を含む離職者の増加や、デジタル⼈材の不⾜が課題でした。
必要なスキルと適性をもとに採用したい⼈物像を明確にして、採⽤ツールや採⽤ホームページのリニューアルを実施。採⽤基準の設定や採⽤フローの再構築などに取り組んだことで、前年比1.5倍となる9名の採⽤を実現しました。

出典元:中小企業庁「中⼩企業・⼩規模事業者の⼈⼿不⾜への対応事例集」

社内の状況に合わせた最適な組織開発に取り組もう!

組織開発は、企業内の人間関係や部署間の連携を強化し、組織の柔軟性や生産性向上を目指す取り組みです。個人ではなく組織全体を対象に、目標設定、課題解決、効果測定を通じて持続的な改善を行います。MVVやOKRなどのフレームワークやコーチングを活用し、従業員のエンゲージメントを高めることが重要です。現代の変化するビジネス環境に対応するため、経営者の積極的な関与や外部支援も効果的です。

生産性の向上や従業員エンゲージメントの強化、離職率低下にもつながるため、本記事で紹介したプロセスなどを参考に、具体的な施策を検討してみてください。


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