INSIGHTS

2026/08/13

広義のデザインとは?ブランディングを「設計」として捉える経営視点を解説

コラム

「デザイン」と聞くと、多くの方はロゴや配色、パッケージといった”見た目”を思い浮かべるのではないでしょうか。

しかし、経営やブランディングの文脈で語られる「デザイン」は、もっと広い意味を持ちます。本記事では、”広義のデザイン”とは何か、そしてブランディングとどう関わるのかを解説します。

この記事でわかること

  • 狭義のデザインと広義のデザインの違い
  • なぜ今「広義のデザイン」が経営に必要なのか
  • ブランディングが「広義のデザインの実践」である理由
  • デザインを経営に活かすための視点

広義のデザインとは

広義のデザインとは、見た目を美しく整えることではなく、目的を実現するために物事を「設計」する営みを指します。

英語のdesignには、もともと「設計する」という意味があります。製品の見た目だけでなく、事業のしくみ、顧客の体験、組織のあり方まで、あらゆるものがdesign=設計の対象になります。

最初に結論をお伝えします。ブランディングとは、この広義のデザインを、企業の「ありたい姿」を軸に実践することにほかなりません。

なぜ今「広義のデザイン」が経営に必要なのか

広義のデザインが、いま経営の重要テーマになっています。その背景には、いくつかの変化があります。

  • コモディティ化:機能や品質だけでは差がつきにくくなり、「何を、なぜ、どう届けるか」という設計そのものが競争力になっています。
  • 「意味」の競争:顧客は機能だけでなく、その企業や商品が持つ意味や世界観に価値を感じるようになりました。
  • デザイン経営の広がり:2018年に経済産業省と特許庁が「デザイン経営」宣言を公表し、デザインを企業の競争力を高める経営資源として位置づける動きが広がっています。
  • 無形資産の重要性の高まり:企業価値の源泉が、目に見える資産から、ブランドや体験といった無形の価値へと移っています。その無形の価値を形づくるのが、広義のデザインです。
  • 複雑化した社会課題(Wicked Problem)の山積:環境、人口減少、格差など、単一の正解が存在しない「厄介な問題(Wicked Problem)」が社会に山積しています。こうした問題に向き合うには、個別の施策を積み上げるのではなく、関係する要素を俯瞰し、全体を組み立て直す”設計”の力が欠かせません。

デザインは「装飾」ではなく「設計」である

多くの現場で、デザインは「最後に見た目を整える工程」として扱われがちです。

そう思われがちですが、私たちは、デザインの本質は装飾ではなく設計にあると考えています。

どんな体験を届けたいか、そのために事業やサービスをどう組み立てるか——その設計こそがデザインの中心であり、見た目はその設計を形にした結果にすぎません。

たとえば、優れたサービスは、画面の美しさ以前に「どんな体験を届けるか」という設計が優れています。見た目の心地よさは、その設計が正しいからこそ生きるのです。

ブランディングは、まさにこの広義のデザインの実践です。「ありたい姿(志)」を定め、そこから逆算して、事業・商品・コミュニケーション・組織までを一貫して設計する。私たちが「戦略×クリエイティブ」を掲げるのも、戦略(設計)とクリエイティブ(表現)は、本来ひとつながりのものだからです。

狭義のデザインと広義のデザインの違い

両者の違いを整理すると、次のようになります。

観点狭義のデザイン広義のデザイン
対象見た目・表現(ロゴ、色、レイアウト)事業・体験・組織を含む全体の設計
目的美しく、わかりやすく伝える「ありたい姿」を実現する
関わる人デザイナー中心経営者・全部門
タイミング制作の後工程構想の最初から

狭義のデザインが不要なわけではありません。広義のデザイン(設計)があってはじめて、狭義のデザイン(表現)が力を発揮します。両者は対立するものではなく、地続きなのです。

広義のデザインが扱う領域

広義のデザインは、次のような広い領域を対象にします。

  • 事業のデザイン:何を価値とし、どう収益を生むか。
  • 体験のデザイン:顧客がブランドと出会い、関わるすべての接点。
  • 組織のデザイン:理念をどう共有し、どんな文化で働くか。
  • コミュニケーションのデザイン:何を、誰に、どう伝えるか。
  • 社会構造のデザイン:自社の枠を超えて、産業や地域、社会のしくみそのものをどう変えていくか。複雑な社会課題は一社では解けません。だからこそ、多様な担い手を巻き込み、社会の構造ごと設計し直す視点が求められます。

これらを「ありたい姿」のもとで一貫させること。それが、ブランディングの役割です。

デザインを経営に活かすには

広義のデザインを経営に活かす出発点は、「自社はどうありたいのか」を定めることです。その上で、次の順序で設計を進めます。

  1. ありたい姿(志)を言語化する
  2. そこから事業・体験・組織・発信の設計方針を導く
  3. 狭義のデザイン(表現)で一貫して形にする
  4. 社内外に浸透させ、育て続ける

大切なのは、見た目から入らないことです。設計(Why・What)が定まらないまま表現(How)に着手すると、美しくても一貫性のないブランドになってしまいます。

デザインを経営に活かした企業事例

マツダ

自動車メーカーのマツダは、「魂動(こどう)デザイン」という思想のもと、デザインを単なる造形ではなく、ブランドの価値そのものを体現する経営の軸に据えてきました。デザインを起点に「らしさ」を一貫させることで、独自のブランドポジションを築いています。

良品計画(無印良品)

「これでいい」という思想を、商品・店舗・広告・事業のあらゆる面で一貫して設計している良品計画は、広義のデザインの好例です。見た目の統一以上に、その根底にある価値観そのものが設計されています。

株式会社マネーフォワード

「テクノロジーとデザインこそが世界を大きく変える」と信じるマネーフォワードは、120名以上のデザイナーが活躍するデザイン組織を運営しています。

各部門からデザイナーが集う「Design Leads」という会議体で対話を重ね、経営層も巻き込みながら、デザインの取り組みを全社的な動きへと広げてきました。

さらに、より戦略的なレベルへ落とし込むためにCDO(最高デザイン責任者)を配置し、デザイン組織の本格的な構築を進めています。デザインを一部門の機能ではなく、経営の中枢に据えた好例です。

なお、私たちエンビジョンも、「戦略×クリエイティブ」を掲げ、戦略設計からクリエイティブの実装、社内外への浸透までを一貫して手がけています。ブランディングとは、まさに広義のデザインを事業に実装する営みだと考えています。

まとめ

デザインとは、見た目を整えることではなく、目的を実現するために物事を設計することです。そしてブランディングは、企業の「ありたい姿」を軸に、この広義のデザインを実践する営みにほかなりません。

見た目(狭義)から入るのではなく、設計(広義)から始める。その視点に立ったとき、デザインは一部門の仕事から、企業の競争力を生む経営資源へと変わります。


株式会社エンビジョンは、「人を動かし、社会を動かすクリエイティブカンパニー」として、企業の経営や事業の課題と向き合い、その本質的な価値を再定義することで、社会に新しい意義を生み出すブランドへと育てるお手伝いをしています。

戦略設計からクリエイティブの実装、社内外への浸透まで、多様な専門性を持つチームが一貫して伴走します。

広義のデザインを起点としたブランディングからはじまる皆様の挑戦を、ぜひお聞かせください。