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2026/06/26
経営者こそ、自分の「当たり前」を疑えているか|いのうえの思考 #02
ブログ

こんにちは、エンビジョン代表の井上です。
経営をやっていると、毎日、大小さまざまな判断をします。でも最近、ふと怖くなることがあるんです。
自分のいまの判断は、本当に「本質的に正しいから」そうしているのか。それとも、ただ自分にとって慣れた「当たり前」だから、なんとなくそう決めているだけなのか。
この2つ、自分ではびっくりするほど見分けがつかないんですよね。
僕らエンビジョンは、「Critical Creative」という考え方を大事にしています。世の中で当然とされていること、「そういうものだ」と疑わずに受け入れていることを、いったん疑ってかかる。そこから新しい意味を生み出す、という姿勢です。
ふだんは、これをクライアントの事業や、社会の課題に向けて使っています。でも最近、強く思うんです。この「前提を問い直す」という刃は、社会に向けるだけじゃなくて、もっと身近な、自分の会社にも、そして何より、経営者である自分自身にも向けるべきなんじゃないか、と。今日はその話を書きます。
Contents
「当たり前」は、たかだか今の時代の枠でしかない
人間というのは、知らず知らずのうちに、ある特定の価値観を「当たり前」だと信じ込んでしまう生き物です。
やっかいなのは、その「当たり前」が、実は今いる時代や環境のなかでだけ通用する、ひどく限定的なものだということ。時代が流れれば、当たり前なんてあっけなく移り変わります。100年前に「常識」とされていたことの多くは、いま通用しません。逆に、いま僕たちが信じて疑わない「当たり前」も、100年後にはきっと笑われている。
歴史を少し学んでみると、これがよくわかります。過去を知ると、いまの自分の「当たり前」が、ちっとも普遍じゃないことに気づける。なのに僕たちは、それに気づかないまま自分の「当たり前」にしがみつき、だんだん頑固になっていくんですよね。
いちばんやっかいなのは、自分の「当たり前」が見えないこと
ただ、もっとやっかいなことがあります。
自分の「当たり前」は、自分には見えないんです。
空気のように透明で、そもそも疑う対象にすらならない。「これはおかしいかも」と思える時点で、それはもう半分疑えている。でも本当の「当たり前」は、おかしいと思う回路にすら入ってこないんですよね。だから、自分の価値観を一歩引いて外から眺める —— この”メタ認知”が、前提を問い直す力の正体だと、僕は思っています。
そして、ここが経営者にとっては、けっこう怖い話なんです。
経営者こそ、自分の「当たり前」を疑えているか
僕は、リーダーが率先して動くこと、メンバーに寄り添うことは、すごく大事だと思っています。でも、その「率先」も「寄り添い」も、経営者自身が”自分の当たり前”を疑えていなければ、結局は空回りすると思うんです。
なぜか。自分の価値観や、自分が成功してきたやり方を一度も疑ったことのない経営者は、メンバーの「自分とは違う成功の形」を認められないからです。
いくら「寄り添う」と言っても、無意識のうちに「自分のコピーを増やす」運動になってしまう。自分と同じやり方をする部下を高く評価し、違うやり方をする部下に違和感を覚える。それ、多様性とは正反対ですよね。本人は「いい上司」のつもりで、実は組織から多様性を削り取っている、ということが起こりうる。
冒頭に書いた「自分の判断は、本質的に正しいのか、ただの慣れた当たり前なのか」という問いは、まさにこれです。これを問い続けられるかどうかが、経営者の仕事の本質の1つなんじゃないかと、僕は自戒を込めて思っています。
クリエイティブとは、見えない前提を「疑える形」にする力
では、自分には見えない「当たり前」を、どうやって疑える形にするのか。
ここで、僕はクリエイティブの出番だと思っています。
クリエイティブというと、見た目をきれいにするための装飾だと思われがちですよね。ロゴをかっこよくする、広告を映えさせる、みたいな。でも、僕が考えるクリエイティブの本当の役割は、まったく別のところにあります。
見えていなかった前提を、外に取り出して、可視化する。誰もが「疑える形」にする。
これがクリエイティブの力だと思うんです。空気のように透明で、誰も触れなかった「当たり前」を、目に見える言葉やかたちにして、テーブルの上に置く。置かれて初めて、人はそれを疑い、問い直すことができる。
宣伝に聞こえたら申し訳ないんですが、僕らエンビジョンがやっているのは、まさにそこなんです。会社の「当たり前」を可視化して疑い、そこから新しい意味を見つける —— その営みを、クリエイティブの力で後押しする。それが僕らの仕事だと思っています。
さいごに、この記事自体もひっくり返しておく
ここまで「前提を問い直そう」と書いてきました。でも最後に、この記事自体をひっくり返すことを言います。
ここに書いたことも、しょせんは僕の現時点の仮説にすぎません。僕の「当たり前」だって、5年後には古びているかもしれない。それも含めて、問い直され続けるべきものです。
だから、結論を押しつけるつもりはありません。ただ、一度立ち止まって、問うてみてほしいんです。
「うちの会社で”そういうもの”として受け入れている当たり前は、本当に当たり前なんだろうか」と。
理念が浸透しないのも、人が動かないのも、新しい挑戦が生まれないのも —— その奥には、たいてい誰も疑っていない前提が、静かに潜んでいます。
前提を問い直すことは、特別な人の特権じゃありません。あなたの会社の、明日の朝から始められることです。まずは経営者である自分の「当たり前」から、疑ってみませんか。僕も、そうします。
ライター紹介

井上大輔
エンビジョン代表取締役
2017年、前身となるクリエイティブプロダクションの代表取締役就任、翌年MBOし独立。クリエイティブが担う領域でポジティブな未来を実現させるべくenvisionのパーパス、ナラティブをリードする。envisionと同様のパーパスを掲げる企業・個人が増えることで、社会が、日本が前進すると考えている。