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2025/07/17
タグラインとは?キャッチコピーやスローガンとの違い、事例を解説
コラム

タグラインとは、企業や商品・サービスの価値や想いを短い言葉で印象的に伝えるメッセージのことです。最近では、「今のタグラインを見直したい」「作成の手順やポイントを知りたい」と感じている方も増えてきました。
本記事では、タグラインの基本的な意味や、類義語との違い、作成のポイントなどを解説します。あわせて、実際の成功事例も紹介しますので、作成を検討している方は最後までご覧ください。
タグラインとは?
タグライン(tagline)とは、企業や商品・サービスから生まれたブランドが伝えたい「価値」や「想い」を、短く印象的な言葉で表現したメッセージのことです。英語の「tag(タグ)」は物事を認識するためのラベルやレッテル、「line(ライン)」は一文や一節を意味します。
広く認知されている企業のタグラインには、以下のようなものが挙げられます。
- 株式会社ニトリ 「お、ねだん以上。」
- カルピス株式会社 「カラダにピース。「カルピス」」
- ライオン株式会社「今日を愛する。」
企業や商品・サービスの方向性やメッセージを端的に伝えるタグラインは、広告やブランディング、PRなど、あらゆるマーケティング活動の土台となります。さらに、明確なタグラインがあることで、それを軸にした商品開発やキャンペーン展開、社内施策の方針付けなど、多角的な事業展開につなげることができます。
タグラインの役割と重要性
タグラインは、企業と顧客をつなぐ重要なコミュニケーション手段として、以下のような役割を担います。
なかでも大きな役割は、企業や商品・サービスの価値やアイデンティティを端的に表現し、顧客にわかりやすく伝えることです。企業が何を大切にし、どのような想いでサービスや商品を展開しているのかを短いフレーズの中に込めることで、競合他社と差別化できます。特に、似たようなサービスがひしめく市場では、自社ならではの個性を印象付けるタグラインが、市場でのポジションを確保するための武器となります。
さらに、タグラインには、ブランド戦略を行ううえでの重要な指針としての役割もあります。タグラインを軸にマーケティングや広報活動を行えば発信内容に一貫性が生まれ、ブランディング効果が高まるでしょう。
なお、ブランディングについてさらに詳しく知りたい方は、「ブランディングの意味とは?企業が行う目的や効果、手順を解説」の記事をご覧ください。

タグラインと類義語の違い
タグラインと似た意味を持つ言葉として、以下の3つが挙げられます。
- キャッチコピー:生活者の興味を引くための印象的なフレーズで、主に広告に使われる。
- スローガン:企業や団体の理念や行動指針を表現した、社内向けのメッセージ。
- ステートメント:ブランドや企業の方針・価値観を簡潔にまとめた文章。
これらは一見似ていますが、それぞれ目的や使われる場面に違いがあります。以下で詳しく見ていきましょう。ただし、これらは明確な区別が必要なわけではなく、タグラインと目的や位置付けが共通している場合は、柔軟に使い分けて問題ありません。
キャッチコピー:ターゲットや商品によって異なる
キャッチコピーとタグラインは「時期・対象によってフレーズが変化するかどうか」という点で大きな違いがあります。
キャッチコピーの主な目的は、伝えたいメッセージを印象的なフレーズで表現し、顧客や生活者の記憶に残すことです。キャッチコピーは、キャンペーン期間や新商品の発売など、ターゲット層や取り扱う商品・サービスに合わせて、比較的短期間のプロモーション活動で使用される場合が多いです。つまり、企業が展開するサービスや商品の魅力を訴求力の高い言葉で印象づけ、短期間で注目を集めるという広告的な役割を担います。
一方で、タグラインは企業や商品・サービスの価値を長期的に伝えるために用いられます。ターゲットや時期が変わっても基本的に同じ表現が使われ、一貫性を保つことが特徴です。
スローガン:社内向け
タグラインとスローガンはいずれも、企業の価値観や使命を伝えるという点では共通していますが、大きな違いは「誰に向けた言葉か」という点です。タグラインは生活者など社外の人々に向けたものであるのに対して、スローガンは基本的に社内のメンバーに向けて発信されます。
スローガンとは、企業が掲げる理念や信念、行動指針を簡潔に表した言葉であり、主に社内に向けて発信するものです。どのような価値観を持ち、どのような姿勢で業務に臨むのかを共有し、社員の意識統一や行動の方向性を示す役割があります。
社内外のステークホルダーに向けて発表される中期経営計画と、社内スローガンを連動させることで、目的と目標に対する認識の統一を全社で図ることができます。
ステートメント:タグラインの補足
ステートメントとタグラインの大きな違いは、「ボリューム」と「目的」です。タグラインはキャッチーで短い文章で認知度を高めることを目的とするのに対し、ステートメントは、理解や共感を促すためにやや長めの文章になります。
ステートメントは、企業やブランドが掲げるミッション(取り組むべきこと)やビジョン(なりたい姿)をより具体的かつ丁寧に表現した文章で、タグラインを補足する役割を持ちます。タグラインが短く印象的なフレーズで企業の価値や姿勢を表現するのに対し、ステートメントはその背景や意味合いを深掘りして説明するものです。多くの場合、この2つはセットで設計され、広報活動や広告戦略、PRなど、企業のあらゆる事業の指針となります。
タグライン作成の手順
魅力的で生活者の印象に残るタグラインを生み出すためには、段階を追って丁寧に進めることが重要です。ここからは、作成手順を具体的に解説します。
企業のミッション・ビジョンを整理する
タグラインは、顧客に対して企業やブランドの価値や想いを伝える重要な役割を持つため、まずは自社のミッションやビジョンを明確にすることが不可欠です。どのような未来を描いているのか、どのような使命や理念を持って商品・サービスを提供しているのかを整理することが、魅力的なタグラインを作成するための第一歩となります。
企業のアイデンティティを明確にする
続いて、自社がどの業種・業態に分類されるのか、競合と比較してどのような強みを持つのか、顧客のどのような課題を解決できるのかを明確にしていきます。こうして自社のアイデンティティを深く理解することで、タグラインに込めるべき想いや価値観が具体的になり、企業の方向性やメッセージがいっそう明確に伝わります。
ターゲットを明確にし、関心や課題を調査する
自社のアイデンティティを再確認できたら、次に「誰に届けたいか」を明確にします。年齢層や性別、ライフスタイル、価値観といったターゲット(顧客)像を具体的に描き、さらにそのターゲットが何を求め、どのような関心や課題を持っているかを丁寧に調査することが大切です。
顧客への理解を深めることで、言葉選びの軸が自然と定まり、一方的なアピールではなく、共感を引き出すタグラインの創出につながります。また、ターゲットにとって身近な表現や言い回しを取り入れると、より伝わりやすく、印象に残るタグラインが作成できるようになります。
表現の候補を精査する
企業のミッションやビジョン、アイデンティティ、ターゲット像が明確になったら、それらをもとに「表現の核」となるフレーズを作成します。表現の核とは、タグラインのベースになるものであり、ブランドの目的や想いを簡潔に伝える中心的な言葉です。
この核を起点に複数のタグライン案を出し、丁寧に見直していきます。その際には、以下の4つのポイントを意識して精査すると良いでしょう。
- 企業が持つ価値観や姿勢が表現されているか
- 他社と差別化につながる独自性があるか
- 耳に残る語感やリズムがあるか
- シンプルで冗長になっていないか
これらの観点から候補を見極めることで、企業の価値をシンプルかつ魅力的に伝えるタグラインが完成します。

タグライン作成のポイント
魅力的なタグラインを作成するためには、いくつかのポイントがあります。
まず意識したいのは、「耳に心地よく響く、リズミカルな言葉選び」です。語感の良いフレーズは、顧客の印象に残りやすく、企業や商品・サービスに対する記憶の定着を促します。
さらに、シンプルで覚えやすい言葉を使うことも重要です。一目で意味が伝わり、すぐに思い出せる言葉は、タグラインの認知度を高めると同時に、企業自体の価値や姿勢を明確に伝える効果があります。
また、タグラインは言葉だけで完結するものではありません。ロゴやカラー、フォントなどブランドのデザイン要素と統一感を持たせると、ブランドの世界観が強化されます。ブランドのデザイン要素について詳しく知りたい方は、「成功するブランディングデザインの秘訣:目的とポイント、企業事例から学ぶ」「ブランドロゴの重要性や必要性とは?ブランディングに効果的な作成手順も」の記事も併せてご覧ください。
なお、ブランドマネジメントの観点からは、商標登録の検討も欠かせません。タグラインが第三者に使用されるリスクを避けるためにも、タグラインが決まった段階で法的保護の観点から登録を視野に入れておくと安心です。
企業のタグライン事例
印象的なタグラインは、企業の魅力を端的に伝える力を持っています。ここからは、実際にどのような言葉が使われているのか、具体的な事例を紹介します。
カゴメ「自然を、おいしく、楽しく。」
カゴメ株式会社の「自然を、おいしく、楽しく。」は、企業の姿勢とブランドイメージを端的に表した印象的な言葉です。
「自然を」からは、同社が扱う野菜や果物といった自然由来の素材が連想され、健康的で安心感のある商品づくりへのこだわりが感じられます。
「おいしく、楽しく。」という言葉からは、日常の食卓に彩りと親しみやすさ、楽しさを提供する企業姿勢が伝わってきます。全体としてリズムも軽快で、語感の良さとメッセージ性の高さが、カゴメのブランドイメージをより多くの人に届ける助けとなっているのは間違いありません。
アイプリモ「あなたの最高になりたい」
アイプリモは、日本で生まれたブライダルリング専門店です。創業25周年の節目に「あなたの最高になりたい」というタグラインを打ち出し、特設ページやスペシャルムービーも公開しました。
このタグラインには、プロポーズをする人、そのパートナー、そしてリングの製作に関わるデザイナーや職人まで、すべての立場に共通する「相手を想う気持ち」が込められています。シンプルながらも感情に訴えるメッセージで、企業の価値観や姿勢が生活者にしっかりと伝わる表現となっています。
出典:創業25周年を迎えタグライン「あなたの最高になりたい」を策定 特設ページ、スペシャルムービーを公開|カップルに人気の婚約指輪,結婚指輪はI-PRIMO(アイプリモ)
kubell (旧Chatwork)「シゴトがはずむ」
ビジネスチャットツール「Chatwork」を提供するkubellは、2021年のリブランディングで「シゴトがはずむ」というタグラインを採用しました。2024年度には、「ニッポン全国のシゴトがはずむ」をテーマにした特設サイトを公開。全国の中小企業が「Chatwork」を活用することで実現した成功事例が紹介されています。
さらに、企業がどのように「Chatwork」を使って仕事を効率化し、活気をもたらしたのかについて具体的な事例を集め、サービスの利用方法やメリットをさらに深掘りしています。このようなブランディング活動を通じて、kubellは「シゴトを楽しく、便利に進めるためのツール」としての価値を広めています。
出典:信頼いただけるブランドの実現とエンゲージメント強化 | 株式会社kubell
ベイジ「顧客の成功を共に考えるWeb制作会社」
株式会社ベイジは、中小規模のWeb作成会社で、2022年のリブランディングを契機に、従来の「BtoBに強いウェブ制作会社」というタグラインを見直し、「顧客の成功を共に考えるウェブ制作会社」へ変更しました。この変更は、単なる制作業者ではなく、顧客と共に課題を考え、成果に向けて伴走するパートナーでありたいという意志の表れです。
また、ベイジのコーポレートサイトには、代表取締役の枌谷氏による「どうしてこのタグラインを定めたのか」という解説ページも掲載されており、同社のブランディングに対する真摯な想いが感じられます。
タグラインはブランディングの重要な一要素
タグラインは、短い言葉で企業の価値観やサービスの特徴を伝えるメッセージです。企業や商品・サービスの認知度を拡大し、独自性を印象づけて他社との差別化を図る重要な役割を担います。さらに、ブランディング戦略全体の方向性を明確にし、顧客との長期的な信頼関係の構築にも寄与します。そのため、タグラインは単なる“言葉”ではなく、企業の根幹を支える戦略的資産として、慎重かつ丁寧に設計することが求められます。
当社は、ブランディング、マーケティング、クリエイティブに加え、財務、法務・知財、人事・労務などの領域横断チームを基にクリエイティブコンサルティング事業を展開しています。
成長を支えるパートナーとして、ブランド戦略立案から皆様の「ありたい姿」の実現をサポートいたしますので、お気軽にお問い合わせください。